「スタート直後、蹴られて呼吸ができなくなった…」
オープンウォータースイム(OWS)で最も怖いのは、パニックです。
でも、対処法を知っていれば大丈夫。溺れそうになった時の3つの選択肢を覚えておきましょう。
読者ターゲット
この記事は、こんな方に向けて書きました:
- ✅ OWS経験が少ない初挑戦者
- ✅ プールでは泳げるが、海が不安な方
- ✅ 過去にOWSでパニックになった経験がある方
- ✅ アイアンマンのスイムスタートが怖い方
読了時間: 約8分
OWSのパニックは「誰にでも起こる」
私がアイアンマン・ケアンズに挑戦した時、スタート直後に軽いパニックを経験しました。
パニックになった瞬間
- 状況: スタート直後の混雑エリア
- 原因: 後ろから来た人に蹴られ、ゴーグルに水が入った
- 症状: 呼吸が乱れ、心拍数が急上昇、冷静さを失いかけた
- 時間: 約30秒間(体感では3分以上)
幸い、事前に対処法を知っていたため、すぐに回復できました。
でも、知らなければDNFしていたかもしれません。
なぜOWSでパニックになるのか?
プールでは平気なのに、OWSでパニックになる理由は以下の通りです。
プールとOWSの違い
| 項目 | プール | OWS |
|---|---|---|
| 視界 | クリア | 濁っている |
| 底 | 見える | 見えない |
| 水温 | 一定 | 場所で変わる |
| 波 | なし | あり |
| 混雑 | レーン分け | スタート時は密集 |
| 退避場所 | プールサイド | 遠い |
最大の違い: 「いつでも立てる」という安心感があるかどうか
パニックの兆候(早期発見が重要)
パニックは突然来るわけではありません。以下の兆候が出たら要注意です。
? 初期症状
- 呼吸が浅くなる
- いつもより息が荒い
- 吸う時間より吐く時間が短い
- 心拍数が急上昇
- 胸がドキドキする
- 手足が冷たくなる
- 視野が狭くなる
- ブイしか見えなくなる
- 周りが見えなくなる
- 思考が停止する
- 「どうしよう」しか考えられない
- 冷静な判断ができない
この段階で対処すれば、パニックは防げます。
溺れそうになった時の3つの選択肢
パニックになった時、取るべき行動は3つあります。
選択肢①: 背浮きで休む
最も推奨される方法
やり方
- 泳ぐのを止める
- 仰向けになる
- 大きく深呼吸する(3〜5回)
- 心拍数が落ち着くまで待つ(30秒〜1分)
メリット
- ✅ ウェットスーツがあれば、絶対に沈まない
- ✅ 呼吸を整えられる
- ✅ 視界が開けて、冷静さを取り戻せる
- ✅ エネルギーを使わない
注意点
- ⚠️ 波がある時は、顔に水がかかることがある
- ⚠️ 混雑エリアでは、他の選手とぶつかる可能性あり
実践のコツ
- 頭を後ろに倒し、耳まで水に浸ける
- 腕を広げて、バランスを取る
- 脚は伸ばさず、軽く曲げる
私の経験: スタート直後にこれで30秒休み、その後は問題なく完泳できました。
選択肢②: 犬かきで進む
クロールが辛い時の代替手段
やり方
- クロールを止める
- 犬かき(または平泳ぎ)に切り替える
- 呼吸を整えながら、ゆっくり進む
- 落ち着いたらクロールに戻る
メリット
- ✅ 前に進める(制限時間を稼げる)
- ✅ 呼吸が楽
- ✅ 視界が確保できる
- ✅ 心理的に安心(「進んでいる」感)
注意点
- ⚠️ クロールより遅い
- ⚠️ 体力を使う(長時間は不向き)
実践のコツ
- 無理にクロールに戻さない
- 「3分だけ犬かき」と決めて、落ち着くまで続ける
- ブイを目標に、少しずつ進む
アイアンマンでは犬かきOK: ルール上問題なし。完走優先です。
選択肢③: サポート艇につかまる(最終手段)
DNFしないための最後の選択肢
やり方
- 手を上げて、サポート艇を呼ぶ
- カヤック・SUB・ボートにつかまる
- 呼吸を整える(数分休んでOK)
- 自力で泳ぎを再開する
メリット
- ✅ 完全に安全
- ✅ 確実に休める
- ✅ DNFにならない(自力で再開すればOK)
注意点
- ⚠️ ボートに乗ったらDNF(つかまるだけならOK)
- ⚠️ 混雑エリアでは、すぐに来てくれないことも
実践のコツ
- 手を高く上げて、はっきり合図する
- つかまったら、焦らず深呼吸を5回
- 「もう1回やってみる」気持ちで再スタート
重要: 「助けを求める=恥ずかしい」ではありません。完走のための正しい選択です。
パニックを防ぐための事前準備
そもそもパニックにならないために、事前にできる準備があります。
準備①: OWS練習を最低3回はやる
プール練習だけではダメ
練習でやるべきこと
- ウェットスーツでの背浮き練習
- 10分間、背浮きだけで浮いていられるか確認
- 波がある日にも試す
- 混雑を想定した練習
- 友人と並んで泳ぐ
- わざとぶつかってみる(安全に)
- ゴーグルに水が入った時の対処
- 泳ぎながらゴーグルを直す練習
- 片目だけ開けて泳ぐ練習
- 視界が悪い中での泳ぎ
- 頭を上げて前を見る練習(ヘッドアップクロール)
- ブイを目標に泳ぐ練習
最低3回、できれば5回以上OWS練習をしましょう。
準備②: スタート位置を工夫する
混雑を避けるだけでパニックリスクは激減
スタート位置の選び方
| 位置 | メリット | デメリット | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 最前列中央 | 最短距離 | 超混雑 | トップ選手 |
| 2〜3列目 | 短距離・混雑回避 | やや混雑 | 中級者 |
| 最後列 | 空いている | 遠回り | 初挑戦者 |
| 端(左右) | 混雑回避 | 少し遠回り | 初挑戦者におすすめ |
私の選択: 最前列の端(右側)→ 混雑を避けつつ、最短距離
初挑戦者におすすめ: 2〜3列目の端 → 混雑回避優先
準備③: ゴーグルを2つ用意する
ゴーグルトラブルはパニックの最大原因
推奨セットアップ
- メインゴーグル(しっかり密着型)
- ミラーレンズ(晴天用)
- しっかりフィット
- 予備ゴーグル(ウェットスーツの中)
- クリアレンズ(曇天・雨用)
- 首の後ろに挟んでおく
- ゴーグルバンドの調整
- きつすぎず、緩すぎず
- 2本指が入る程度
レース前日にゴーグルを試着し、フィット感を確認しましょう。
準備④: ウェットスーツの試着を必ずする
首の締め付けでパニックになる人も多い
チェック項目
- ☑️ 首周りが苦しくないか?
- ☑️ 肩が動かしやすいか?
- ☑️ 呼吸が苦しくないか?
- ☑️ 背浮きできるか?
きつい場合: 首周りを少し切る(許容範囲内で)
ウェットスーツは「少しきつい」が正解ですが、首周りだけは緩めがおすすめ。
準備⑤: スタート前のウォーミングアップ
体を慣らしてからスタートする
ウォーミングアップ手順
- スタート30分前に海に入る
- 50m軽く泳ぐ
- 背浮きを1分間試す
- 深呼吸を5回
- 「いける」と確認してからスタートラインへ
これだけでパニックリスクは半減します。
スタート直後の「最初の200m」が勝負
OWSのパニックは、ほとんどがスタート直後の200m以内で起こります。
最初の200mの戦略
- 絶対に飛ばさない
- 周りがどんなに速くても無視
- 「ゆっくり」を意識
- 混雑を避ける
- 少し外側を泳ぐ
- ぶつかったら避ける(無理に抵抗しない)
- 呼吸を意識する
- 3回に1回ではなく、2回に1回呼吸でもOK
- 「吸う」より「吐く」を意識
- 200m通過したら確認
- 「大丈夫だ」と自分に言い聞かせる
- この時点で落ち着けば、あとは大丈夫
最初の200mさえ乗り越えれば、完泳率は劇的に上がります。
パニック時のメンタルコントロール
パニックは「体」ではなく「心」の問題です。
パニック時に唱える言葉
- 「ウェットスーツがある。沈まない」
- 科学的事実を思い出す
- 「背浮きすればいい」
- 逃げ道があることを確認
- 「みんな同じ気持ち」
- 周りも不安(あなただけじゃない)
- 「1回深呼吸しよう」
- 行動に移す
パニックは「思考停止」が原因。言葉を唱えることで、思考を再起動できます。
実際のパニック体験談(読者投稿)
以下は、このブログの読者から寄せられた実際のパニック体験談です。
体験談①: スタート直後に蹴られた(Aさん・30代男性)
「スタート直後、後ろから来た人に顔を蹴られ、ゴーグルがズレました。水が入り、呼吸ができなくなりました。焦って泳ごうとしましたが、余計に苦しくなり…
でも、事前に『背浮き』を練習していたので、すぐに仰向けになりました。30秒休んで、ゴーグルを直してから再スタート。その後は問題なく完泳できました。
背浮き練習をしていなければ、DNFしていたと思います。」
体験談②: 波が怖くて動けなくなった(Bさん・40代女性)
「プールでは問題なく泳げましたが、OWSは初めて。波が高く、呼吸のたびに水が口に入りました。パニックになり、その場で動けなくなりました。
サポート艇に手を上げて、カヤックにつかまりました。5分ほど休んで、『もう1回やってみよう』と思い、再スタート。ゆっくり犬かきで進み、なんとか完泳できました。
助けを求めることは恥ずかしいことじゃない、と実感しました。」
体験談③: 混雑で押されてパニック(Cさん・20代男性)
「スタート直後、周りの選手に押されて、前に進めなくなりました。呼吸ができず、『このまま溺れるかも』と思いました。
でも、事前に『最初の200mはゆっくり』と決めていたので、スピードを落として外側に避けました。混雑を抜けたら、落ち着いて泳げるようになりました。
スタート位置を端にすればよかった、と後悔しました。」
? 完走への道を選ぼう
あなたに合った準備ツールを選んでください
まとめ: パニック対策は「知識」が9割
OWSのパニックは、「泳力」ではなく「知識」で防げます。
この記事の重要ポイント
- ✅ パニック時の3つの選択肢を覚える
- 背浮き / 犬かき / サポート艇につかまる
- ✅ 事前準備が最重要
- OWS練習を最低3回
- スタート位置を工夫
- ウォーミングアップを必ずする
- ✅ 最初の200mが勝負
- 絶対に飛ばさない
- 混雑を避ける
- 呼吸を意識する
- ✅ パニックは恥ずかしいことじゃない
- 助けを求めてOK
- 背浮きしてOK
- 完走することが最優先
パニックになっても、対処法を知っていれば完走できます。
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執筆者: kenta102(アイアンマン・ケアンズ 16時間9分完走)
公開日: 2026年2月9日


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