2023年4月6日の夜、石垣島の立ち飲み屋にいた。
知人の山口さんが飲んでいると聞いて合流した。カウンターには知らない人が何人かいた。話してみると、翌々日の石垣島トライアスロンに参加する人たちだった。
自分も石垣島トライアスロンに出る。ただし初めて。オリンピックディスタンス。スイム1.5km、バイク40km、ラン10km。合計51.5km。運動経験もほとんどない。これだけで十分不安だった。
カウンターの隣にいた人が言った。
「長距離はいいよ。」
その人は宮古島トライアスロンの話をしていた。スイム3km、バイク155km、ラン42.195km。合計200km。石垣島の4倍。
周りにいた全員が「無理無理」と笑った。そもそも明後日の石垣島すら初挑戦で、運動経験もろくにない人間が宮古島なんて、完全に無謀だと。自分でもそう思った。
でも、「長距離はいい」と言った人の話しぶりには不思議な説得力があった。速さの自慢じゃない。「あの距離を走り切った自分」に対する静かな満足感みたいなものが伝わってきた。
その夜、泡盛を飲みながら、少しだけ思った。
「無謀かもしれないけど、やってみたいかもしれない。」
初トライアスロン、石垣島
2日後、スタートラインに立った。
オリンピックディスタンス。51.5km。初めてのトライアスロン。
正直なことを言うと、スイムが怖かった。プールじゃない。海。波がある。周りに人がいる。パニックになりかけた瞬間もあった。
でも完走した。
ゴールした時の感覚は、今でもはっきり覚えている。疲れているはずなのに、身体が軽かった。達成感とかいう言葉では足りない。全身が「やった」と言っている感じ。
あの立ち飲み屋の人が言っていた「長距離はいい」が、少しだけ分かった気がした。
Luminaのイベントで、長距離の人たちに出会った
石垣島のレース前後、Facebookでトライアスロン雑誌「Lumina」の投稿をよく見かけた。ブックマークしておいた。
しばらくして、Luminaが奈良でトレーニングイベントをやるという告知が流れてきた。坂道トレーニング。奈良なら近所だ。行ってみた。
そこで出会ったのは、宮古島やフルディスタンス226kmに挑戦している人たちだった。
一緒に走って思ったのは、「体力的に無理だ」ということだった。
坂道で千切れた。ペースについていけなかった。長距離の人たちは別の生き物だと思った。
でも、弱音を吐いても誰も笑わなかった。
「大丈夫、みんな最初はそう」「ここさえ超えたらあとは下り」「一緒に行こう」。そんな声をかけてもらいながら、なんとか完走した。
このサポートがなかったら、走り切れなかった。
そしてこの日の完走が、小さな自信になった。「ついていけない」と思った距離を、助けてもらいながらでも走り切った。その事実が残った。
市民プールの先生に相談した
スイムが課題だった。距離を伸ばすなら、泳力を上げないと話にならない。
通っていた市民プールの先生に相談した。
「226km走りたいんです。」
先生の反応は棒読みだった。
「すごいね。もっと練習しないとね。」
正直、もう少しリアクションが欲しかった。でも先生は次にこう言った。
「同じようなこと言ってる人がいるから、紹介するわ。」
この一言で、同じ目標を持つ人と繋がった。
振り返ると、226kmへの道のりで起きたことは全部同じパターンだった。「人に会う → 少し興味を持つ → 一緒にやる → できるようになる」。自分一人で決断した瞬間は一度もない。
226kmのゴールテープ
2026年、ケアンズ。フルディスタンス226km。
スイム3.8km、バイク180km、ラン42.195km。
制限時間17時間。結果は16時間9分。
完璧なレースではなかった。バイク80km地点で胃が止まった。ラン30km地点で「もう歩こう」と3回思った。制限時間まであと何分か、暗算する余裕もなかった。
それでもゴールした。
ゴールテープを切った時の感覚を言葉にするのは難しい。
感動した。気持ちよかった。達成感だと思う。でもどれも正確じゃない。一番近い表現は、「全身が満足した」。
サウナで整った時の感覚を知っている人は多いと思う。あの「ととのい」の何倍も深い場所で、身体が「お前、やったな」と言っている感じ。16時間かけて、全身のエネルギーを使い切った後にしか味わえない感覚。
あの石垣島の立ち飲み屋で「長距離はいい」と言った人は、この感覚のことを言っていたのだと思う。
始めるのに必要なものは「速さ」じゃない
226kmを完走するのに、特別な才能は要らなかった。
自分は速くない。16時間9分は、制限時間17時間に対してギリギリの記録。トップ選手は8時間台でゴールする。自分の2倍速い。
そもそも運動経験がほとんどなかった。石垣島のトライアスロンが初めてのレースで、「宮古島なんて無謀だ」と全員に言われた人間が、3年後に226km走っている。
でも完走は完走だ。
必要だったのは速さじゃなく、「人との繋がり」と「準備」だった。
立ち飲み屋で興味を持った。Luminaの練習会でサポートしてもらった。市民プールの先生が仲間を紹介してくれた。そして本番では、事前に作った補給計画とタイムラインが支えてくれた。
始めるのに必要なのは、才能でも体力でもお金でもない。「やってみたいかも」と思う瞬間が1回あればいい。
もし今「長距離って面白そうかも」と思っているなら
あの夜の自分と同じ場所にいる人がいるかもしれない。
「トライアスロン、興味はあるけど自分には無理だろう」「226kmなんて想像もつかない」「そもそも泳げない」。
全部、3年前の自分が思っていたことと同じだ。
このブログ「ENDURANCE OPS」は、そういう人のために作った。根性論じゃなく、データとテクノロジーで「完走」を設計するメディア。
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