ロードバイクのペダルにはFavero Assioma Duoがついている。両側計測で、屋外のワット数はずっとこれで見てきた。一方、TTバイクには何もついていない。普段はトレーナーに固定してあるからトレーナー側が計測してくれるが、外に持ち出した瞬間、数字が消える。そして9月に佐渡で走る190kmは、TTバイクで走る。
答えは最初から一つに見える。Assiomaを付け替えればいい。ペダルレンチ一本、数分の作業、追加費用ゼロ。正直に書いてしまうと、それで良かったのだと今でも思っている。
それでも、TTバイク専用にもう一つパワーメーターを買うと決めた。WahooのPOWRLINK ZERO、片側計測。付け替えで済む話に数万円を払う判断だから、理由は並べられるだけ並べて、自分への言い訳が混ざっていないか順番に見ておきたい。
付け替えない理由は三つあった
一つ目はポジションだ。TTポジションは股関節が深く曲がり、膝の軌道がロードと変わる。エアロポジションで時間を重ねると、膝まわりの窮屈さはロードのそれと別物になる。POWRLINK ZEROのベースであるSpeedplayは、フロートの調整幅が広くスタックハイトも低い。膝に逃げ場のあるペダルをTT側に置きたい、というのが最初の理由だった。
二つ目は切り替えの摩擦。付け替え自体は数分でも、トルク管理、サイコンとのペアリング切り替え、キャリブレーション、そして「いまどっちのバイクについているか」の管理が毎回発生する。数分の準備が要る練習は、疲れている日ほどやらなくなる。これは意志の問題ではなく、仕組みの問題として扱うことにしている。
三つ目は、二台を常時走れる状態にしておきたかったこと。TTはトレーナーに固定したまま、ロードはいつでも外に出せる。ペダルを共有した瞬間、この並列が崩れて、どちらかが常に「準備が要るバイク」になる。
三つ並べて読み返すと、どれも「付け替えでは駄目だ」と言い切れるほどの理由ではない。それでも買うと決めたのだから、決め手は理屈の外にある。強いて言えば膝だ。TTポジションで膝に余計な負担を足したくない、という感覚的な優先順位が、数万円と釣り合った。釣り合ったと感じた、というのが正確なところだ。
片側計測という妥協
選んだのは片側計測モデルだ。左脚の出力を2倍して全体を推定する方式で、左右差がそのまま誤差になる。両側計測のDuoを日常的に使っている人間が、なぜ新しく買うほうを片側に落とすのか。
Duoを使ってきたからこそ、と答えられる。自分の左右バランスの傾向は、Duoの履歴でもう知っている。大きく偏ってもいないし、日によって暴れてもいない。片側計測の弱点は「左右差が不明な人」と「左右差が不安定な人」に対して大きく出る。自分がそのどちらでもないことをデータで確認できているなら、片側×2倍の数字は一貫性を保つ。私が屋外の数字に求めているのは絶対精度ではなく、その一貫性のほうだ。
それでも両側との価格差を前に手が止まったのは事実で、最後は「TTバイクの用途はペーシングとSSTの管理で、ペダリング解析ではない」と用途を言葉にして決めた。用途を言葉にできない買い物は、だいたい高いほうを買って後悔する。
届いたら最初にやること
手元に来るのは月末の予定だ。最初にやることは決めている。DuoとPOWRLINKを別々のバイクに履かせたまま、同じ日の同じ脚で数字を突き合わせる答え合わせだ。両側計測を持っている人間が片側計測を買ったことの唯一の利点は、片側がどこまで信用できるかを自分の脚で検証できることだと思っている。その結果は、使ってから書く。

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