先に結果から書きます。佐渡190kmのバイクパート、NP(ノーマライズドパワー)は168W。目標レンジ163〜178Wのド真ん中でした。平均心拍は144、しかも前半145に対して後半143と、7時間走って心拍が上がっていません。数字だけ見れば、8週間の計画どおりの完璧なレース運びです。
ただ、この記事はその自慢をするためのものではありません。白状すると、テーパリング計画は崩壊していました。レース前の13日間、自転車にほぼ乗っていません。この記事は、計画がどう崩れて、それでもなぜ走り切れたのかを、ガーミンの実測データで正直に振り返る記録です。
8週間の土台 — レディネス3の朝から始まった
準備期間の山場は8月上旬でした。土日連続で133kmと135.8km、2日間で269km・獲得3,436m。その翌朝、トレーニングレディネスは自己最低の「3」を記録し、予定していたSSTを延期する判断をしました(この週の顛末はレディネスが低い朝にやることに書いています)。回復を待って高強度を置き直し、8週間かけて土台を作る——ここまでは計画どおりでした。
テーパリング、計画と現実
計画では、2週間かけて量を4割、7割と落としながら、強度の刺激だけ残すはずでした。現実はこうです。
| 計画 | 実際 | |
|---|---|---|
| 2週間前 | 量を4割減、SSTと90kmロング | 8/23に34km(平均心拍152)を1本 |
| レース週 | 刺激入れ45分+短時間ライド | 乗車ゼロ |
| 結果 | 急性負荷をなだらかに抜く | 当日朝の急性負荷: 0 |

最後に乗ったのは本番13日前。左膝に痛みが出て、病院で靭帯の損傷と診断され、安静にしていたからです。テーパリングというより、強制的な完全休養でした。正直、スタート前は膝への不安と、「脚の作り方を忘れていないか」という不安の両方を抱えていました。(出走は自己判断です。怪我を抱えた状態での無理な出走は、おすすめしません。)
それでも走れた理由(結果論として)
先に断っておくと、これは推奨ではありません。ただ結果として分かったのは、8週間かけて作った持久的な土台は、2週間乗らなかった程度では消えないということです。長時間・低〜中強度の能力は、短期間の休養での落ち幅が比較的小さいと言われますが、それを自分の身体で確かめる形になりました。崩れたのは計画であって、貯金ではなかった。計画どおりに休めるのが一番ですが、崩れても終わりではありません。
前夜と当日朝 — 睡眠スコア49、レディネス32
前夜は20時に布団に入りました。眠れませんでした。正直に書くと、市販の睡眠改善薬を使っています。(初めての薬をレース前夜に試すのはおすすめしません。使うなら事前に自分の身体で確かめて、用法・用量は説明書どおりに。持病や服薬中の方は薬剤師・医師に相談してください。)
起床は3時。ウォッチの判定は、睡眠スコア49点、トレーニングレディネス32、コメントは「身体の声を聞いて」。要するに「今日は無理をするな」という数字です。この数字でスタートラインに立ちました。レディネスは普段の練習では「高強度を置く場所を決める道具」として絶対視していますが、レース当日だけは、数字ではなく計画で走る日です。眠れなかった一晩より、前々日までの睡眠と8週間の積み上げの方が、当日のパフォーマンスには効きます。
本番の実測 — NP168W、7時間の中身


本編約189km、経過6時間55分(走行6時間21分)。NP168W/平均146W/VI 1.15/IF 0.70。総仕事量3,483kJ、獲得標高約1,740m、気温は25〜30℃。登りのキャップは240Wと決めていて、超えたのは全体の5.6%(約22分)でした。
補給は30分おきに炭水化物、前半はアミノバイタルの赤を入れ、3時間を過ぎてからは足つり対策でプレシジョンのジェルに切り替える計画。ここまでは予定どおり回りました。
Z坂14%、ダンシング(立ち漕ぎ)の代償
名物のZ坂は勾配14%前後。序盤で脚はまだ元気だったので、ダンシング(立ち漕ぎ)でパワーをかけて登り切りました。グラフの2時間目付近、10分平均が215Wまで跳ねている山がそれです。気持ちよく登れた一方で、この時点で前ももをほぼ使い切りかけていました。この代償は、後で請求されます。
前ももが攣った — 小木坂エイドでの応急処置
終盤の小木坂で、前もも(大腿四頭筋)が攣りました。Z坂の立ち漕ぎのツケです。坂の途中のエイドに入り、やったことは2つ。水で脚を冷やす。紫のパッケージの電解質パウダーを水に溶かして飲む。これで攣りはすぐに治まり、再スタートできました。私にはこの組み合わせが効きましたが、攣りの原因は人それぞれなので、万能の対処ではありません。それでも「攣ったら終わり」ではないことは、覚えておいて損がないです。
終盤の失速の正体は、疲労ではなかった
グラフの4.5〜5.5時間目、パワーが130W前後まで沈んでいる区間があります。走りながら「脚が終わったか」と思っていましたが、正体は違いました。補給をサボっていたんです。攣りの対応でリズムが崩れ、30分おきのルーティンが飛んでいました。気づいて補給を再開したら、パワーは戻りました。それどころか、体幹を使ってペダルを踏む感覚まで戻ってきた。終盤の登り返しでパワーが持ち直しているのは、根性ではなくエネルギーです。長丁場で失速したら、疲労を疑う前にまず補給を疑う。今回一番の学びかもしれません。
この190kmで学んだこと
- 8週間の貯金は2週間では消えない。ただし、計画どおりに休める方が精神衛生上はるかに良い
- 攣りは冷却と電解質で戻ることがある。エイドは補給所であると同時に修理工場
- 失速したら、疲労より先に補給を疑う。「脚が終わった」の何割かはエネルギー切れ
- 前夜眠れなくても走れる。睡眠は前々日までの貯金で戦う
なお、レースを終えた夜のレディネスは「1」、必要回復時間は90時間と表示されました。身体は正直です。この請求書には、今度こそ計画どおりに支払います。
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今回の準備で痛感したのは、計画は崩れる前提で、崩れても成立する余白を持たせて設計することの大事さです。それを自分の身体で確かめたので、次はあなたの番です。
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