前回(Part 1)で書いたのは「現状把握」の話だった。FTP229W、体重82kg、富士ヒル70分台に必要な3.6W/kgまで0.81W/kg足りない。出力+46W、体重-5kg。両方を6週間で同時に動かすしかない。
ここからが、その実装フェーズの話。
6週間42日分のトレーニングプランを、週単位で全部公開する。Zwiftと関西実走をどう組み合わせるか、各週の狙いはどこにあるか、どこが分岐点か。
スプレッドシート版(各日のZwiftワークアウト名・心拍ゾーン・補給メモまで含む詳細版)は別途用意中だが、本記事だけでも自分のFTPと体重を当てはめれば実行可能なレベルで書いた。
- プラン全体の骨格
- FTPゾーンの前提
- Week 1: リセット & FTP再測定(4/24〜4/30)
- Week 2: Build 1 – SST + Threshold導入(5/1〜5/7)
- Week 3: Build 2 – Threshold本番 + VO2max導入(5/8〜5/14)
- Week 4: Peak Volume Week(5/15〜5/21)
- Week 5: Race Specific(5/22〜5/28)
- Week 6: Taper + Race(5/29〜6/7)
- レース当日のペーシング
- ZwiftとPWR(実走)の役割分担
- 進捗管理
- このプランの再現性について
- 詳細版スプレッドシート(準備中)
- 次回予告
プラン全体の骨格
| Phase | 期間 | 目的 | 週TSS目安 |
|---|---|---|---|
| W1: リセット | 4/24〜4/30 | 疲労抜き → FTP再測定 → SST導入 | 300 |
| W2: Build 1 | 5/1〜5/7 | SSTボリューム + Threshold導入 | 450 |
| W3: Build 2 | 5/8〜5/14 | Threshold本番 + VO2max導入 | 550 |
| W4: Peak Volume | 5/15〜5/21 | 週10時間、最大ボリューム | 650 |
| W5: Race Specific | 5/22〜5/28 | レースシミュレーション | 500 |
| W6: Taper + Race | 5/29〜6/7 | ボリューム半減 → 本番 | 300 |
W1で疲労を抜きながら正確なFTPを取り直して、W2-W3で強度の基礎を積む。W4でボリュームを最大まで引き上げて、W5で本番ペースを体に入れて、W6でテーパーする。
ロードレースのトレーニング設計としては王道の山型カーブだが、富士ヒルに最適化するなら「W4のボリューム」と「W5の本番シミュレーション」をどう組むかが勝負になる。
FTPゾーンの前提
ゾーン設計は推定FTP 245W基準で組んでいる(W1のテストで再設定する)。
| ゾーン | %FTP | 出力(W) | 用途 |
|---|---|---|---|
| Z1 Recovery | <55% | <135 | 回復走 |
| Z2 Endurance | 56-75% | 135-185 | 基礎持久力 |
| Z3 Tempo | 76-90% | 185-220 | ベース強化 |
| Z4 Threshold | 91-105% | 220-260 | 富士ヒル本命ゾーン |
| Z5 VO2max | 106-120% | 260-295 | パワー天井上げ |
富士ヒル本番はZ4上限〜Z5下限(95-105%FTP)を60〜70分維持するレース。だからプラン全体もZ4を主軸に、VO2maxで天井を押し上げ、SSTでボリュームを稼ぐ三層構造で設計した。
Week 1: リセット & FTP再測定(4/24〜4/30)
岡山エンデューロ直後なので、まず疲労を抜く。ここで強度を入れると、6週間の最初の段階で穴が空く。
| 日 | 内容 | 詳細 |
|---|---|---|
| 4/24 金 | 完全OFF | レース疲労抜き |
| 4/25 土 | Zwift Z2 60min | 心拍120-140、Watopia平坦 |
| 4/26 日 | 実走 Z2 90-120min | 淀川CRなど平坦 |
| 4/27 月 | OFF | ストレッチのみ |
| 4/28 火 | Zwift FTP Test 30min | 20分全開 × 0.95 = FTP |
| 4/29 水 | Zwift SST 2×12min | 新FTPの88-93%、rest 5min |
| 4/30 木 | OFF or Z1 30min | – |
週合計: 約5〜6時間
このWeekの最重要セッションは火曜のFTPテスト。集団走行のNP値ではなく単独の正確なFTPを出して、残り5週間のゾーン設定をリセットする。ここをサボると、以降5週間ずっとズレた強度で練習することになる。
FTPテストは「20分MMP方式」推奨。15分W-up → 5分全開(MAP刺激)→ 10分回復 → 20分オールアウト → クールダウン。20分の平均パワー × 0.95 = FTP。実施前日は完全OFF。
Week 2: Build 1 – SST + Threshold導入(5/1〜5/7)
GW初週。実走を主軸に、Zwiftで強度を補完する。
| 日 | 内容 | 詳細 |
|---|---|---|
| 5/1 金 | OFF | – |
| 5/2 土 | 金剛山×1本 + Z2 | 金剛山をZ3(85%FTP)で1本(目安38-42分) → 帰路Z2、合計2-2.5h |
| 5/3 日 | 金剛山×2本reps | 1本目Z3(85%) → 下山休憩10分 → 2本目Z4(95%)で本気(35-38分) |
| 5/4 月 | OFF | – |
| 5/5 火 | Zwift SST 3×12min @90%FTP | rest 4min |
| 5/6 水 | Zwift Z2 60-75min | 会話できるペース |
| 5/7 木 | Zwift Threshold 2×15min @95%FTP | rest 6min |
週合計: 約7〜8時間
5/3の金剛山×2本repsが、このWeekの主役。1本目で脚を作って2本目でZ4を本気で踏む構成は、富士ヒルの中盤〜後半の脚の使い方に直結する。
参考タイム: 金剛山36分 = 富士ヒル ブロンズ(75分)相当ペース、33分 = 70分相当。1本目40分・2本目35分くらいで踏めれば、現状から見て順調な滑り出しと判断できる。
Week 3: Build 2 – Threshold本番 + VO2max導入(5/8〜5/14)
ここからが本格フェーズ。Z4を週2回、VO2maxを週1回入れる。
| 日 | 内容 | 詳細 |
|---|---|---|
| 5/8 金 | OFF or Z1 30min | – |
| 5/9 土 | 高野山ロング 3-3.5h | R480大門経由、獲得800-900m、Z2-Z3混合 |
| 5/10 日 | 金剛山×3本reps 2.5-3h | 1本目Z3 → 2本目Z4(95%) → 3本目Z4(95%維持)、各本間休憩10分 |
| 5/11 月 | OFF | – |
| 5/12 火 | Zwift VO2max 5×3min @115%FTP | rest 3min(Spencer) |
| 5/13 水 | Zwift SST 2×20min @88%FTP | rest 5min |
| 5/14 木 | Zwift Threshold 2×20min @95-100%FTP | rest 6min |
週合計: 約8〜9時間
5/10の金剛山×3本がこのWeekの核。3本目をZ4で耐えきれるかが、富士ヒル後半の粘りを決める。3本目で明確にタレる(2本目+5分以上)なら、まだ閾値持久力が足りないサイン。
5/14終了時にFTP再テスト推奨。3週間の負荷で確実に上がっているはずなので、ここでゾーンを更新してW4以降の強度を正確化する。
Week 4: Peak Volume Week(5/15〜5/21)
6週間で最もきつい週。ここを乗り切れれば70分台は見える。逆にここで崩すとW5-6が連鎖崩壊する
| 日 | 内容 | 詳細 |
|---|---|---|
| 5/15 金 | Zwift Z2 45min | アクティブレスト |
| 5/16 土 | 高野山ロング 3-3.5h | 獲得1000m、Z3混ぜる |
| 5/17 日 | 🔥金剛山×2本連続🔥 | 1本目Z4(95%)で頂上 → 下山せず麓まで降りずに5分休憩 → 2本目Z4(95%)再アタック |
| 5/18 月 | OFF | 完全休養 |
| 5/19 火 | Zwift VO2max 6×3min @115-120%FTP | rest 3min |
| 5/20 水 | Zwift Z2 60min | 回復 |
| 5/21 木 | Zwift Over-Under 3×(3min@105% + 3min@90%)×3set | Threshold強化の切り札 |
週合計: 約10時間(最大)
5/17の「金剛山×2本連続(下山なし)」が、このプランで最も意味のあるセッション。
距離20km・獲得1100m。富士ヒル本番(24km・1270m)の約85%相当。これが完遂できれば、本番は「やったことのある負荷の延長線」として認識できる。タイム目安は1本目35-37分、2本目37-40分(2本目は疲労考慮)。
このWeekで睡眠を削ると一気に崩れる。睡眠7時間以上を死守する。トレーニングより重要だ。
Week 5: Race Specific(5/22〜5/28)
本番予行演習のWeek。ボリュームは少し落として、本番ペースの精度を上げる。
| 日 | 内容 | 詳細 |
|---|---|---|
| 5/22 金 | OFF | – |
| 5/23 土 | 実走 Z2 2h | 脚を回す程度 |
| 5/24 日 | 🏁レースシミュレーション🏁 | 金剛山×2連続: 1本目98-100%FTP → 5分休憩 → 2本目100-102%FTP / 機材・補給・ウェア本番同等 |
| 5/25 月 | OFF | – |
| 5/26 火 | Zwift VO2max 4×4min @115%FTP | rest 4min(最後のVO2刺激) |
| 5/27 水 | Zwift Z2 45min | – |
| 5/28 木 | Zwift Threshold 2×20min @100%FTP | レースペース確認 |
週合計: 約8時間
5/24の金剛山×2が本番予行。タイム目安は1本目34-36分、2本目35-37分。
ここで自分なりに編み出した目安式がある。
5/24金剛山×2合計時間 + 15% ≒ 富士ヒル予想タイム
例えば合計70分なら本番80分前後、合計65分なら本番74分前後。標高差・路面・気象条件の補正をざっくり経験則で15%上乗せした式で、過去の自分の他レースでもそれなりに合っていた。
W5終了時にFTP再テストできれば理想。難しければ、5/28のThreshold 2×20の体感で判断する。
Week 6: Taper + Race(5/29〜6/7)
10日間。テーパーから本番まで。
| 日 | 内容 | 詳細 |
|---|---|---|
| 5/29 金 | OFF | – |
| 5/30 土 | Zwift Z2 75min + 3×1min @VO2max | 脚の張り抜き |
| 5/31 日 | 実走 Z2 90min + 短い登り刺激 | 体動かす程度 |
| 6/1 月 | OFF | – |
| 6/2 火 | Zwift 3×8min @95%FTP | rest 4min、ボリューム50% |
| 6/3 水 | OFF | – |
| 6/4 木 | Zwift Z2 45min + 5×30sec全開 | 神経系刺激のみ |
| 6/5 金 | 実走 Z2 45-60min | 機材最終チェック |
| 6/6 土 | 30min + 3×1min @90%FTP | 「オープナー」。これ大事 |
| 6/7 日 | 🏁本番 70分台狙い | – |
週合計: 約4〜5時間
テーパーの鉄則: 強度は維持、ボリュームは半減。完全OFFを連続で入れると体が「寝る」。短く・鋭く・少なくが正解。
6/6のオープナー(レース前日の短時間+短いインターバル)を省略する人が多いが、これは省略するとレース当日に脚が回らない。30分+1分×3本でいい、必ずやる。
レース当日のペーシング
| 区間 | パワー目標 |
|---|---|
| スタート〜5km | 85-90%FTP(オーバーペース厳禁) |
| 5〜15km | 95-100%FTP(メイン巡航) |
| 15〜20km | 95%FTP(高度影響でパワー低下は想定内) |
| 20〜24km | 余力あれば102-105%FTP |
スタート直後のオーバーペースが富士ヒル最大の罠。スタートゲートを通過してから5kmは、感覚より明確に抑える。
補給は20分ごとにジェルor羊羹、合計3本。水はボトル半分(軽量化のため1本のみ)。
ZwiftとPWR(実走)の役割分担
このプラン全体を俯瞰すると、Zwiftと実走の使い分けには明確なルールがある。
- Zwift = 強度コントロール(SST/Threshold/VO2max/Over-Under)、平日の限られた時間で精密に追い込む
- 実走 = ボリュームと実登坂感覚(高野山ロング、金剛山reps)、週末の長時間で本番に近い負荷
Zwiftだけだと実登坂の体重移動・コース読み・補給タイミングが身につかない。実走だけだと強度コントロールの精度が出ない。両方を計画的に組み合わせるのが、限られた時間で結果を出す唯一のやり方だと思っている。
特に金剛山の使い方は、関西在住者の富士ヒル対策で最大の武器になる。なぜ金剛山が富士ヒル対策に最適なのかは、Part 3で詳しく書く。
進捗管理
各週末(木曜終了時)に以下を記録:
- 週間TSS(目安: W1=300, W2=450, W3=550, W4=650, W5=500, W6=300)
- 体重(週平均)
- 主観的疲労度(1-10)
- 朝HRV or 安静時心拍
この4項目を毎週記録するだけで、「無理してる」「順調」「もっといける」のサインが読めるようになる。特に主観的疲労度が3週連続で7以上ならボリューム下げる、安静時心拍が普段より+5bpm続いたら回復優先、というルールで自動的に判断する。
このプランの再現性について
繰り返しになるが、これはFTP245W前後・体重82kgの中年会社員ホビーレーサーが富士ヒル70分台を狙う場合のプランだ。
- 既にFTP3.5W/kg超えてる人 → 強度はもう少し高く、ボリュームを増やす
- 週6時間しか取れない人 → W4のボリューム週は無理せず週8時間に圧縮、平日Zwiftを優先
- 富士ヒル目標が90分台 → SSTとZ3中心で組み直す、VO2maxは週1で十分
絶対解ではなく「自分の現在地と目標から逆算した一例」として参照してほしい。
詳細版スプレッドシート(準備中)
本記事は週単位のサマリーだが、実際にやってみると「火曜のSSTって具体的にどのZwiftワークアウト?」「金剛山repsの心拍ゾーンは?」「補給タイミングは?」と、もう一段階の詳細が必要になる。
各日のZwiftワークアウト名・目標心拍ゾーン・補給メモまで含む完全版スプレッドシートを準備中。自分のFTPを入れると全42日のW値が自動計算されるテンプレートとして公開予定。
公開のお知らせは記事末尾のメールリストか、サイト内告知で。
次回予告
Part 3は金剛山特化編。
- なぜ金剛山が富士ヒル対策に最適なのか(勾配プロファイル分析)
- 金剛山のタイムから富士ヒルタイムを予測する方法
- 高野山との使い分け(強度 vs ボリューム)
- 関西ローディーの富士ヒル対策ルート集
関西在住で富士ヒルを真面目に狙う人にとっては、Part 3が一番役に立つはず。
そして6/7、レース当日。Part 4で結果報告する。

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