ガーミンの心拍数が高く出る原因|光学式の限界とケイデンスロック実測

Gear & Setup

流しのつもりで走っているのに心拍180超え。ウォームアップ直後から心拍が張り付いて下りてこない。ガーミンの心拍数が明らかに体感とズレる現象は、故障を疑う前に知っておくべき「仕組み上の理由」があります。

この記事では、手首の光学式心拍計の限界と、ランナーに頻発するケイデンスロック現象、そして同じライドを2台のデバイスで記録したら平均心拍が13も違った私の実例から、正確に測るための工夫を解説します。

光学式心拍計の仕組みと構造的な限界

時計の裏の緑のLEDは、皮膚に光を当てて血流の変化を読み取っています(光学式)。胸ベルト(電気式)が心臓の電気信号を直接拾うのに対し、光学式は「血流の揺れ」という間接情報からの推定です。だから、腕振りの振動、手首の曲げ伸ばし、汗、気温による血流変化、バンドの緩みといった要因で簡単にノイズが乗ります。安静時や一定ペースでは優秀ですが、動きが激しい・強度が変化する場面が構造的に苦手です。

ケイデンスロック現象 — 心拍がピッチと同期する

ランで特に多いのがこれです。腕振りの振動リズム(ピッチ、毎分170〜180前後)を、光学センサーが心拍と誤認してロックしてしまう現象。「走り始めた瞬間から心拍175で張り付く」「ゆっくり走っているのに180台」という症状は、たいていこれです。見分け方は簡単で、自分のピッチと表示心拍がほぼ同じ数字なら疑い濃厚。立ち止まって腕を静止させると、スッと本来の値に落ちます。

【実測】胸センサーと手首、同じワークアウトで比べてみた

「光学式は不正確」とよく言われますが、実際どれくらい違うのか。同じ45分のインドアワークアウトを、胸のセンサーと手首の光学式で同時に記録して比べました。

結果は、平均心拍が143と142、最大心拍はどちらも180。1秒ごとに突き合わせても、差は平均±1拍でした。振動のない室内で、強度の変化もなだらかなワークアウトなら、最近の手首光学式は胸センサーとほぼ同じ数字を出します。「光学式だから使い物にならない」は、普段のトレーニングに関しては言い過ぎです。

胸センサーと手首光学式心拍計の45分比較グラフ。2本の線がほぼ重なり、1秒ごとの差は平均±1拍
胸センサーと手首光学式心拍計の45分比較グラフ。2本の線がほぼ重なり、1秒ごとの差は平均±1拍

じゃあ冒頭の「明らかにおかしい心拍」は何なのか。ポイントは、光学式が狂うのは平均ではなく瞬間だということです。8月、チームのTT練習会で走った53kmを、胸センサー(Edge)と手首の光学式(ウォッチ)で同時に記録した2本のデータで突き合わせました。平均心拍は胸139に対して手首136。差は2.6拍で、これだけ見れば「光学式でも問題なし」に見えます。

ところが、追い込みの瞬間を見ると話が変わります。270〜310Wを踏み続けた約3分間、胸センサーは135から191まで素直に上がっているのに、手首は146までしか追いつけていません。差は45拍。瞬間の最大差は53拍、20拍以上ズレていた時間は合計2分を超えていました。しかも手首がようやく追いついたのは、追い込みが終わって心拍が落ち始めてからです。

屋外TT練習会での胸センサーと手首光学式の心拍比較。追い込みの瞬間に胸191・手首146と45拍の差
屋外TT練習会での胸センサーと手首光学式の心拍比較。追い込みの瞬間に胸191・手首146と45拍の差

つまりこの日、光学式が起こしたのは「高く出る」ではなく「追いつけずに低く出る」でした。原因は光学式の弱点そのもので、急激な心拍上昇への遅れと、ハンドルに荷重して手首が曲がる姿勢での読み取りづらさです。同じ日の後半の追い込みでは手首も183まで正しく追従していたので、常に外すわけではありません。一方で胸センサー側にも、ベルトの接触が一瞬切れて値が落ちる場面がありました。どちらも万能ではない。ただ方向はどちらであれ、数字を判断材料にする高強度の場面で、光学式のリアルタイム表示は信用できない。これが2本の記録から出た結論です。

ちなみに2本の全体平均は138と125と大きく違いますが、重なった区間だけで比べると139と136。ウォッチ側が停止中や前後も記録していたぶん、平均が下がっただけです。2台の平均が食い違っても、即「センサーが壊れた」ではない、というのも覚えておくと無駄に悩まずに済みます。

結論はシンプルです。室内や一定強度のZ2なら手首で十分。信用が揺らぐのは、屋外の振動・高強度の出し入れ・ラン序盤のケイデンスロック・寒さといった特定の場面で、心拍を判断材料にする日だけ胸センサーに切り替える。これが実測から出た現実的な使い分けです。

正確に測る装着の工夫5つ

  • ① 手首骨から指1〜2本分、肘側に着ける: 骨の凹凸の上はノイズ源
  • ② バンドを1穴きつく: ズレない程度に密着。緩みが最大の敵
  • ③ ウォームアップ中に一度表示を疑う: ピッチと同じ数字ならロック中。腕を数秒静止して再取得
  • ④ 冬は特に注意: 寒さで末端の血流が減ると精度が落ちる。長袖の下で温める
  • ⑤ 心拍を判断材料にする日は胸センサーを使う: インターバルやレースなど数字で判断する日ほど、瞬間ノイズの出やすい場面を光学式に委ねない

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種目別のおすすめ構成

ラン: ケイデンスロックが出る人は胸ベルトが最短の解決策。バイク: 手首は振動+手首の角度で条件が悪いので、心拍で強度管理をするなら電気式を。パワーメーターがあるなら、そもそも強度管理はパワー基準に寄せるのが確実です。スイム: 水中は光学式の精度がさらに落ちるため、対応する胸ベルト等でなければ参考値と割り切ります。

まとめ

心拍が高く出る原因の大半は、故障ではなく「光学式の構造的な苦手場面」です。装着位置とバンドで7割は改善し、残りは電気式センサーの仕事。心拍データはトレーニング判断の土台なので、土台が揺れている自覚を持つことが、実は一番のトレーニング精度向上です。

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