新車を買う余裕がない。中古ロードバイクで226kmに挑んでもいいのか

Gear & Setup
僕がアイアンマンに申し込んだとき、最初にぶつかった壁はスイムでもランでもなかった。 「バイク、いくらかかるの?」だった。 ネットで調べるほど不安になる。TTバイク80万、ホイールだけで30万。普通に暮らしてる会社員には現実味がない。結局、僕は中古のロードバイクを18万円で買って、それで226km走り切った。この記事は、あの頃の自分に向けて書いている。

100万円のバイクと、18万円のバイクの差

先に正直に言っておく。100万円のバイクの方が速い。それは間違いない。 ただ、どれくらい速いかというと、180kmで稼げるタイム差はだいたい10〜20分程度。もちろん条件による。風向き、コースの起伏、ライダーの体重、ポジションの最適化。変数だらけだ。 一方で、練習を3ヶ月ちゃんと積むと、平均速度は3〜5km/h上がる。これは180kmに換算すると1時間以上の差になる。 つまり、初挑戦の段階では機材より脚の方がよっぽど効く。 僕の場合、2019年のアイアンマン・ケアンズで使ったのはGIANT TCR Advanced 2の2015年モデル。中古で18万円だった。バイクパートの平均速度は約20km/h。決して速くはないけど、制限時間には余裕があった。バイクの性能が足りなくて困った場面は、正直一度もなかった。

180km走って気づいた「本当に大事なこと」

レースを終えて振り返ると、バイクパートでキツかったのは「速さ」の問題じゃなかった。 痛みだった。 100km過ぎたあたりから、腰が張ってくる。手のひらが痺れる。首が固まる。こういう不快感が積み重なって、集中力が削られていく。 これは高いバイクを買えば解決する問題じゃない。自分の体に合ったバイクに乗っているかどうかで決まる。 高級なエアロバイクやTTバイクは、空気抵抗を減らすために前傾姿勢が深くなる設計になっている。プロや経験者にはそれでいい。でも初挑戦で、しかもスイム3.8km・ラン42.2kmがバイクの前後に控えている状態で、あの深い前傾を180km維持するのは相当しんどい。 中古のミドルグレードのロードバイクは、比較的楽な姿勢で乗れる。フレームにもしなりがあるから、路面の振動が体に伝わりにくい。長丁場のレースでは、この「楽さ」がそのまま完走率に直結する。

「続けるか分からない」なら、なおさら中古がいい

アイアンマンは申し込んだ時点ではテンションが高い。「やるぞ」と思っている。でも正直なところ、完走してみないと2回目があるか分からない。 新車を100万円で買って、1回レースに出て「もういいかな」となったとき、2年後に売れる値段はだいたい半額。50万円の損失になる。 中古18万円で買っていれば、同じ条件で売っても損失は5〜8万円程度で済む。 お金の話だけじゃない。中古で浮いた分を練習環境やレース遠征費に回せる。エントリー代、宿泊費、日々の補給食。226kmのレースは、バイク以外にもけっこうお金がかかる。

じゃあ、何を基準に選べばいいのか

中古バイクを探すとき、僕が重要だと思う順番はこうだ。

1. フレームサイズが合っているか

これがすべての土台。サイズが合っていないバイクで180km走ると、体のどこかが必ず壊れる。 目安として書いておく。
身長フレームサイズ
155〜165cmXXS〜XS(470〜500mm)
165〜175cmS〜M(500〜540mm)
175〜185cmM〜L(540〜560mm)
185cm〜L〜XL(560mm〜)
ただし、メーカーによって数値の意味が違う。GIANTのMとTREKのMは同じじゃない。だから必ず試乗すること。ネットで買うなら、同じモデルを扱っているショップで一度またがってから注文した方がいい。 試乗のときに見るポイントは4つ。ハンドルに無理なく手が届くか。サドルに座ってつま先が地面に着くか。前傾姿勢が苦しくないか。そして、できれば30分以上乗って痛みが出ないか。

2. フレーム素材はカーボンを選ぶ

予算20万円以下の中古なら、2010年以降のカーボンフレームが手に入る。 180km走るなら、カーボンの振動吸収性は本当にありがたい。アルミフレームは硬い。50kmくらいまでは気にならないけど、100kmを超えたあたりから手や腰への負担がじわじわ効いてくる。 予算が10万円以下しかないなら、アルミでもいい。完走はできる。ただ、15万円以上出せるならカーボンにした方が、レース後半の体力の残り方が全然違う。

3. コンポーネントはShimano 105以上

変速機とブレーキのグレードの話。ここはシンプルで、中古でShimano 105が載っているモデルを選べば間違いない。 105は「レース用コンポの入口」みたいな位置づけで、変速の精度も耐久性も十分。メンテナンス部品も手に入りやすい。 一つ下のTiagraでも完走はできるけど、180kmの間に何百回もギアを変えるから、変速のスムーズさは地味にストレスに影響する。 Ultegra以上が載っていればラッキーだけど、中古20万円以下のレンジだと105が載っていれば御の字だと思う。

4. ホイールは純正のままでいい

「ホイールを変えないと遅い」みたいな情報がネットにはたくさんあるけど、初挑戦者がホイールに30万円かける必要はない。 それよりもタイヤを交換した方がよっぽどコスパがいい。1本7,000円くらいのContinental Grand Prix 5000に変えるだけで、転がり抵抗が減って、パンクリスクも下がる。ホイール交換の1/20の費用で、体感できる違いが出る。

5. メンテナンス履歴を確認する

中古バイクの最大のリスクは、見えないところが壊れていること。特にカーボンフレームは、外から分からないクラック(亀裂)が入っていることがある。 確認すべきことは、事故歴の有無、消耗品(チェーン・ブレーキパッド・タイヤ)の交換時期、走行距離。5,000km以下が理想的。1万kmを超えていたら、各部品の状態を念入りにチェックした方がいい。 購入前に、自転車ショップで点検してもらうことを強くすすめる。費用は3,000〜5,000円くらい。この数千円をケチって後から10万円のフレーム交換、みたいな事態は避けたい。

僕が選ぶなら、このあたりから探す

実際に中古市場で20万円以下で見つかるモデルをいくつか挙げておく。

GIANT TCR Advanced 2(2015〜2018年モデル):15〜20万円

僕が実際に使ったモデル。カーボンフレームにShimano 105。軽くて乗りやすい。初挑戦者には一番バランスがいいと思う。GIANTは台数が出ているから中古市場にも在庫が多くて、探しやすいのも利点。

TREK Emonda SL 5(2016〜2019年モデル):18〜22万円

カーボンフレーム・105。ヒルクライムに強いモデルで、起伏の多いコースにはこっちの方が向いている。ケアンズみたいなアップダウンのあるコースなら候補に入れていい。ただ、20万円ギリギリか少し超えるかもしれない。

CANNONDALE CAAD12(2016〜2018年モデル):12〜18万円

これはアルミフレーム。ただし「アルミの最高傑作」と呼ばれるくらい軽くて、下手なカーボンより乗り心地がいいと言う人もいる。予算15万円以下で探すなら、最有力だと思う。

Bianchi Intenso(2015〜2018年モデル):15〜20万円

カーボンフレームで、エンデュランス寄りの設計。要するに「長距離を楽に走る」ことに振ったモデル。振動吸収性が高くて、体へのダメージが少ない。疲れやすい人、腰に不安がある人にはこれを推す。

SPECIALIZED ALLEZ Sprint:10〜15万円

アルミフレーム・105。予算10万円台前半で探すなら、ここが現実的な選択肢。アルミだけど軽量で走りやすいモデルだから、初挑戦の1台としては十分機能する。

どこで買うか

中古自転車の専門店が一番安心。プロが点検・整備済みで、3ヶ月〜1年の保証がつく。試乗もできる。価格は相場より1〜2万円高いけど、その分の安心感はある。サイクリーやワイズロードの中古コーナーが探しやすい。 メルカリやヤフオクは安い。相場より2〜3万円安く買えることもある。ただし、整備は自分で手配する必要がある。「届いたら自転車ショップに持ち込んで点検してもらう」を前提にして買うこと。写真では分からない傷や不具合はそれなりにある。 知人からの譲渡はコスパ最強だけど、サイズが合わないリスクがある。「せっかくもらったから」で合わないサイズに乗って180km走ると本当に後悔する。合わなければ丁重に断っていい。 海外通販(WiggleやChain Reaction Cycles)は新車が安く買えるけど、試乗できない・初期不良対応が面倒。初挑戦者にはおすすめしない。

買ったら、まずやること

自転車ショップで点検・調整

費用は5,000〜10,000円。フレームの亀裂チェック、ブレーキ、チェーン、タイヤ、変速機の状態を一通り見てもらう。ここで問題が見つかれば、レース本番で命に関わるトラブルを防げる。

サドルとハンドルの高さを合わせる

サドルはかかとでペダルを踏んだとき膝がまっすぐ伸びる高さ。ハンドルはサドルと同じ高さか、少し低いくらい。最初はサドルと同じ高さで始めて、慣れてきたら1cmずつ下げていけばいい。

100km以上のロングライドで確認する

これが一番大事。50kmまでは何ともなくても、100kmを超えると体に合っていない部分がはっきり出てくる。腰、手のひら、首。痛みが出たら、その部位に合わせてポジションを微調整する。レース本番で「初めて100km以上乗りました」は危険すぎる。

よく聞かれること

「エアロバイクやTTバイクは要らないの?」

初挑戦なら要らない。エアロバイクは前傾が深くてポジションがキツい。TTバイクはさらにその先。操作性も独特で、初心者には乗りにくい。価格も50〜80万円が普通だから、予算的にも合わない。 「完走」が目標なら、ロードバイクで十分。2回目以降にサブ12(12時間切り)を目指し始めたら、そのときに考えればいい。

「フレームサイズを間違えたら?」

180kmは走り切れないと思った方がいい。小さいフレームは腰が詰まって痛くなる。大きいフレームはハンドルが遠くて肩が壊れる。どっちも50kmなら我慢できるけど、180kmは無理だ。試乗は絶対。

「10万円以下でもいける?」

いける。ただし、アルミフレーム・Tiagraクラスになる。カーボンで10万円以下だと2010年以前のモデルになって、部品の入手性に不安が出る。メンテナンスの追加費用も考えると、できれば15万円は確保したい。

「新車と中古、結局どっち?」

初挑戦なら中古を推す。理由は3つ。売るときの損失が少ない。浮いた予算を他に回せる。そして、続けるかどうかはまだ分からない。新車は「2回目以降、本気で速くなりたくなったとき」に買えばいい。

最後に

この記事を読んでいるということは、たぶんバイクの予算で悩んでいるんだと思う。 「100万円出せないから、まだ早いかな」と思っているかもしれない。 でも、僕は18万円の中古バイクで226km走り切った。16時間9分。ギリギリでもなんでも、ゴールテープをくぐった瞬間に「バイクが安かったから」なんて1ミリも思わなかった。 大事なのは、自分の体に合った1台を見つけて、その上でちゃんと練習すること。 20万円あれば、十分な1台が手に入る。そこからは、あなたの脚次第だ。

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