📋 この記事で分かること
🎯 結論:FTP200W・体重82kgの会社員が、Zwiftと金剛山の5週間メニューを6〜7割こなしてFTPは229Wへ。本番は1時間56分13秒。伸びたのは脚、足りなかったのは減量とペース配分
👤 対象者:FTP 2.4〜2.9W/kg前後で、富士ヒル初参加〜2回目、サブ2からブロンズを狙う社会人サイクリスト
⏱ 読了時間:約15分
🗓 使い方:本番6週間前から。自分のFTPを当てはめて、メニューの数字を置き換える
富士ヒルのトレーニングメニューを検索すると、シルバーやゴールドを狙う人向けの情報が多く出てきます。この記事は、そこには届かない側の記録です。
実走20分テストで出したFTPは200W、体重は82kg、2.44W/kg。平日はZwift、週末は大阪の金剛山。本番までの5週間で何をやり、どれだけ変わり、当日に何が起きたか。推定値ではなく、サイコンに残った数字だけで書きます。
前提:この記事の「現在地」
メニューの数字はすべて、次の条件で組んでいます。自分の条件と違うところは、後半の「ここを変える」で読み替えてください。
| 項目 | 数値・条件 |
|---|---|
| FTP | 200W(実走20分テスト 210W × 0.95、本番6週間前に測定) |
| 体重 | 82kg(2.44W/kg) |
| 年齢・生活 | 40代前半、会社員。練習時間は週6〜8時間が上限 |
| バイク | Trek Madone SL6 Gen7(エアロロード、実測8.5kg) |
| 拠点 | 大阪南部。週末の実走は金剛山と高野山 |
| 背景 | 226kmのロングトライアスロンが本業。20分全開で踏む練習はほとんどしてこなかった |
富士ヒルのコースは、計測区間で約24km、獲得標高約1,250m、平均勾配5%強。緩い勾配が24km続く「持久力の登り」で、フィニッシャーリングの基準はプラチナ60分、ゴールド65分、シルバー75分、ブロンズ90分です。
目標をサブ70からサブ80に下げた理由
最初に立てた目標は70分台でした。根拠は、Intervals.icuが弾き出した推定FTP 240W。集団走行のNP 229Wから「実FTPはもう少し上」と踏んでいたので、通知を見たときは予想通りだと思いました。
ところが、その240Wの元データは5分16秒の登りでした。Intervals.icuの推定FTP(eFTP)は、短時間の高出力から長時間の持続出力を外挿する仕組みです。5分で出せるパワーは20分で出せるパワーより明らかに高い。だから推定値は、現実より楽観的な側に外れます。
同じ千早赤阪村のルートで20分の連続全開テストをやり直した結果が、平均210W。補正後のFTPは200Wでした。
| Intervals.icuの推定FTP | 240W |
| 実走20分テスト | 210W平均 → ×0.95 = FTP 200W |
| 差 | 40W |
| 体重82kgで | 2.44W/kg |
70分台に必要なのは3.6W/kg前後。FTP200Wから5週間で+75Wは、生理学的にほぼ不可能な数字です。選択肢は3つありました。目標を維持して当日撃沈する、維持したふりで挑戦記を書き続ける、実力に合わせて修正する。選んだのは3つ目で、主目標をサブ80(3.1W/kg、77kgなら240W)、挑戦目標をサブ75に置き直しました。
ここで得た教訓は一つです。推定FTPは、レース計画には使わない。ヒルクライムで使う数字は、実走20分テストの実測値だけです。面倒でも、推定値で計画を組んで当日撃沈するよりずっとましでした。
目標タイムとW/kgの実感値
W/kgとタイムの対応表はいろいろ出回っていますが、体重の軽い人ほど当てはまりやすく、80kg級はもう少し上を求められます。今回の経験から言える実感値はこの程度です。
- サブ2(120分):FTP 2.4〜2.8W/kgでも届く。ただし序盤を抑えられることが前提
- ブロンズ(90分):3.0W/kg以上。80kg級なら3.1〜3.3は見ておきたい
- シルバー(75分):3.5W/kg前後から。このメニューの守備範囲の外
5週間トレーニングメニューの全体像
構造は王道の山型です。W1で疲労を抜いて正確なFTPを取り直し、W2〜W3で強度の基礎を積み、W4でボリュームを最大にして、W5で本番ペースを体に入れ、W6でテーパーする。
| 週 | 本番まで | 狙い | 練習時間 | 週TSS目安 |
|---|---|---|---|---|
| W1 | 6週前 | リセット+20分FTPテスト | 5〜6時間 | 300 |
| W2 | 5週前 | SST+Threshold導入 | 7〜8時間 | 450 |
| W3 | 4週前 | Threshold本番+VO2max導入、FTP再テスト | 8〜9時間 | 550 |
| W4 | 3週前 | ピークボリューム | 約10時間 | 650 |
| W5 | 2週前 | レースシミュレーション、FTP再テスト | 約8時間 | 500 |
| W6 | 本番週 | テーパー(量は半分、強度は維持) | 4〜5時間 | 300 |
Zwiftと実走の役割は分けています。Zwiftは強度のコントロール(SST、Threshold、VO2max、オーバーアンダー)で、平日の限られた時間で精密に追い込む。実走はボリュームと登坂感覚(高野山ロング、金剛山の反復)で、週末の長時間で本番に近い負荷をかける。どちらか一方だと、強度の精度か登りの感覚のどちらかが抜けます。
ゾーン設定(FTP200W基準)
| ゾーン | %FTP | 出力(W) | 用途 |
|---|---|---|---|
| Z1 Recovery | 〜55% | 〜110 | 回復走 |
| Z2 Endurance | 56〜75% | 112〜150 | 基礎持久力 |
| Z3 Tempo | 76〜90% | 152〜180 | ベース強化 |
| Z4 Threshold | 91〜105% | 182〜210 | 富士ヒルの本命ゾーン |
| Z5 VO2max | 106〜120% | 212〜240 | 出力の天井上げ |
| 実用Z4(登坂時) | — | 200〜220 | 金剛山の反復で使う |
「実用Z4」は、20分テストで210Wを実走で出せた事実から置いた運用値です。登りでは220W前後を30〜45分持続できると判断し、Zwiftのワークアウトは標準ゾーン、金剛山の反復は実用Z4で回しました。自分のFTPに置き換えるときは、%FTPをそのままスライドさせてください。
週ごとのメニュー
| 週 | 週末の実走 | 平日のZwift | 判断ポイント |
|---|---|---|---|
| W1 | 土:Z2 60分(Zwift可) 日:実走Z2 90〜120分、平坦 |
火:20分FTPテスト 水:SST 2×12分(新FTPの88〜93%) |
疲労を抜く週。集団走行のNPではなく、単独の20分でFTPを決め直す |
| W2 | 土:金剛山×1本(Z3 170W、40〜44分)+Z2、計2〜2.5時間 日:金剛山×2本(1本目Z3 170W → 下山休憩10分 → 2本目 実用Z4 200〜210W) |
火:SST 3×12分@180W 水:Z2 60〜75分 木:Threshold 2×15分@195W |
日曜の2本目を本気で踏めるか。1本目で脚を作り、2本目で閾値を踏む型は本番の中盤〜後半に直結する |
| W3 | 土:高野山ロング3〜3.5時間(獲得800〜900m、Z2〜Z3) 日:金剛山×3本(170W → 200W → 210W、各本の間に10分) |
火:VO2max 5×3分@230W 水:SST 2×20分@175W 木:20分実走FTP再テスト |
3本目が2本目より5分以上遅ければ、閾値持久力がまだ足りない。再テストでゾーンを更新する |
| W4 | 土:高野山ロング(獲得1,000m、Z3を混ぜる) 日:金剛山×2本連続(下山せず5分休憩で再アタック、210W → 205W) |
火:VO2max 6×3分@235W 水:Z2 60分 木:オーバーアンダー 3×(3分@220W+3分@180W)×3セット |
一番きつい週。日曜の2本連続は距離20km・獲得1,100mで本番の85%相当。ここで睡眠7時間を削ると崩れる |
| W5 | 土:実走Z2 2時間 日:レースシミュレーション 金剛山×2本連続(220W → 215W)、機材・補給・ウェアは本番同等 |
火:VO2max 4×4分@230W 水:Z2 45分 木:20分実走FTP再テスト |
本番の「入り」のパワーを体に入れる。ここで本番直前のFTPが決まる |
| W6 | 日:実走Z2 90分+短い登り刺激 前日:オープナー 30分+1分×3本@180W |
火:3×8分@195W(量は50%) 木:Z2 45分+30秒×5本全開 |
量は半分、強度は落とさない。完全OFFを連続で入れると体が眠る。前日のオープナーは省略しない |
関西で富士ヒルを再現する:金剛山と高野山
週末の実走の軸に置いたのが金剛山です。登坂路は10.3km、獲得標高544m、平均勾配5.3%。距離は富士ヒルの半分以下ですが、勾配のレンジがほぼ同じで、20分前後の連続した登りを反復できます。閾値付近で粘る練習を実走の負荷でこなすのに向いていました。
高野山(R480大門経由、獲得800〜1,000m)はボリューム用です。長い登りを含む3時間台のライドで、W3〜W4の土曜を担います。
目安として、金剛山と富士ヒルの距離比は約2.3倍です。金剛山を42分で登る速度をそのまま維持できれば富士ヒルは約98分ですが、実際は後半に標高と疲労が乗るので、それより遅くなると見ておくのが安全です。
減量プラン、そして1kgも落ちなかった話
ヒルクライムは出力体重比の競技なので、パワーを上げるのと同じくらい体重が効きます。計画では82kgから77kgへ、5週間で5kg。週0.8kgペースで、脂肪を落とす上限に近い設定でした。
- 摂取カロリーはTDEEから300〜400kcal引く(W4のボリューム週とW6のレース週は緩める)
- タンパク質は体重1kgあたり2gを死守(77kg時点で154g/日)
- 糖質はトレーニングの前後に寄せて、普段の食事は控えめに
- 毎朝起床直後に体重を測り、週平均で管理する
結果は、82kgのまま。1kgも落ちませんでした。理由ははっきりしていて、トレーニングで消費が増えた分、しっかり食べていたからです。減量は食事のコントロールが9割で、練習量だけでは落ちない。ここは完全に詰めが甘かった部分です。
もし計画どおり77kgまで落とせていたら、229W÷77kgで2.97W/kg。実際の2.79W/kgとの差0.18W/kgは、富士ヒルのタイムにすると数分単位になります。パワーで稼いだ前進を、体重で取りこぼした格好でした。
5週間の結果:FTP 200W → 229W
先に正直なところを書くと、メニューは計画どおりにはこなせていません。平日のZwiftは仕事が立て込むと真っ先に飛び、週末に金剛山へ行くつもりが体調のすぐれない日と重なる。「今日は1本減らす」「今週末は流すだけにする」という判断を何度もしました。消化できたのは6〜7割という感覚です。
それでも、W5の終盤に金剛山で同じ条件の20分テストをやった結果は、補正後でFTP 229W。
| 時点 | FTP | 体重 | W/kg |
|---|---|---|---|
| W1終了時(本番5週間前) | 200W | 82kg | 2.44 |
| W5終了時(本番1週間前) | 229W | 82kg | 2.79 |
| 5週間の変化 | +29W | ±0 | +0.35 |
6〜7割の消化率でこれだけ伸びたのは、それまでの自分が閾値付近で粘る刺激をほとんど入れていなかったからだと思います。226km向けの長い持久系トレーニングに偏っていて、20分全開の刺激が抜けていた。欠けながらでもZ4の反復を入れたこと自体が、伸びしろの大きいところを突いていた。足りない刺激を入れた分だけ、体は素直に返してくれました。
本番:1時間56分13秒
第22回 Mt.富士ヒルクライム、男子40〜44歳クラスの公式記録は1時間56分13秒。目標にしていたサブ2は守れました。ただ、「守れた」というより「守りに入った結果そうなった」のほうが近い。
当日は曇りで、標高が上がるほど霧が濃くなり、いちばん深いところで視界は50mほど。Garminの平均気温は11.3℃、最低8.0℃。スタート地点では汗ばむのに、五合目に近づくと指先が冷える。視界が効かないぶん、ペースの感覚も狂いやすい状況でした。
| 項目 | 記録(Garmin Edge 530) |
|---|---|
| 公式記録 | 1:56:13(Garmin移動時間 1:55:44) |
| 距離/獲得標高 | 23.87km/1,220m(最高地点2,273m) |
| 平均パワー/NP | 185W/194W |
| 20分最大平均パワー | 232W |
| 平均心拍/最大心拍 | 161bpm/181bpm |
| 平均ケイデンス | 71rpm |
| 運動量 | 1,281kJ |
データが語る誤算:最初の30分
失速の原因は、ログにはっきり残っていました。20分の最大平均が232W。83kgで約2.8W/kg、ほぼFTPそのものの出力を、2時間近く登るレースの序盤で踏んでいます。平均185Wに対してNPが194Wという9Wの差も、出力に強弱の波があった証拠です。心拍は平均161で最大181。平均が最大の9割という高さで、序盤から張り付いて後半にじわじわ垂れる、典型的なカーブでした。
つけが回ってきたのは4合目と5合目のあいだです。両脚が痙攣の前兆を出し始め、ここで目標ペースを諦めました。これ以上踏めば確実に攣って止まる。緩めれば脚は戻る。この判断は226kmのフルディスタンスで体が覚えていたもので、残りの区間は攻めるためではなく、脚を取り戻すための登りに切り替えました。サブ2を切れたのは、この判断が間に合ったからです。
細かい話ですが、Garmin上のインテンシティファクターは0.97と表示されていました。額面どおりならFTPの97%で2時間踏み続けたことになり、それはあり得ません。原因はデバイスのFTP設定が200Wのまま更新されていなかったこと。実FTPの229Wで計算し直すと0.85前後で、これなら2時間の登りとして妥当な数字です。そしてこのずれ自体が、「最初の3分の1を、2時間のレースではなく40分のレースのように走った」ことを裏づけています。
金剛山での練習が無駄だったのかと言えば、半分は活き、半分は活かしきれませんでした。フィットネスは確実に積み上がっていて、脚はできていた。活かせなかったのはペース配分です。2本連続の練習で「抑えて入る」感覚は何度も確かめていたのに、本番ではスタートの高揚と周りのスピードに引っ張られて、決めていた入りを守れなかった。問題は脚ではなく、頭のほうでした。
同じメニューを使うなら、ここを変える
自分がもう一度やり直すなら、メニューの構造は変えません。変えるのは次の4点です。
1. 最初の30分は、実FTPの85%に蓋をする
これが最大の宿題です。%FTPで置いておけば、どのFTPの人でもそのまま使えます。
| 区間 | 目標(%FTP) | FTP229Wの場合 |
|---|---|---|
| スタート〜5km | 85% | 約195W |
| 5〜15km | 90〜95% | 205〜215W |
| 15〜20km | 90%(標高の影響で出力が落ちるのは想定内) | 約205W |
| 20km〜ゴール | 余力があれば100% | 約229W |
補給は20分ごとにジェルか羊羹を1本、合計3本。水はボトル1本で半分まで。序盤は「物足りない」と感じるくらいでちょうどいい、というのが1時間56分の結論です。
2. 減量は本番8週前から、食事で
5週間で5kgは、練習と並行するには短すぎました。8週前から週0.5kgペースで、しかもトレーニング量ではなく食事の側で落とす。5kgは富士ヒルで数分に相当します。今回はパワーで29W積んで、体重でその一部を返した形でした。
3. FTPは20分の実走テストで測る
推定FTPは使わない。W1、W3、W5の3回、同じコースで同じ測り方をする。ゾーンも本番のペース配分も、この数字から逆算します。Garminのデバイス設定も更新しておかないと、本番のIFが読めなくなります。
4. 週6時間しか取れない人は、W4を8時間に圧縮する
W4のボリューム週を無理に10時間にせず8時間に。平日のZwiftを優先し、金剛山の反復は週1本に絞る。消化率6〜7割でもFTPは伸びたので、抜けることを前提に「閾値の反復だけは落とさない」順番で組むのが現実的です。
目標別の入口
- サブ2を狙う人(FTP 2.4〜2.8W/kg):このメニューをそのまま。6〜7割の消化でも届きます。すべては序盤の抑えにかかっています
- ブロンズ(90分)を狙う人(3.0W/kg前後):このメニューに、8週前からの減量を足す。80kg級は3.1〜3.3W/kgを目標にしておくと安全です
- シルバー(75分)以上を狙う人(3.5W/kg〜):VO2maxを週2回、ボリュームも上乗せした別設計が必要です。この記事の範囲外です
絶対解ではなく、「FTP200W・体重82kgの会社員が現在地と目標から逆算した一例」として使ってください。ただ、推定値ではなく実走の数字で現実を見ること、届かない目標は潔く修正すること、そして本番で決めた数字を守ること。この3つは、どのレベルでも変わらないと思っています。
関連記事
- 富士ヒル初挑戦ガイド|エントリーから本番までの準備
- 富士ヒルクライム 当日の持ち物と1日の流れ — 初参加者向けチェックリスト
- 富士ヒルクライム2026 結果報告|1時間56分・サブ2と、ペース配分の反省(フルデータ)
この記事は、2026年4〜6月に公開した富士ヒル関連の記事(現状分析、6週間プラン、目標修正、5週間プラン、練習記録)を1本に統合したものです。


コメント