雨のシクロクロスは、晴れの日とは別の競技だと思ったほうがいい。グリップは半分以下になり、乗って越えられた場所が担ぐ区間に変わり、ブレーキは泥を噛んで効きが落ちる。そして体力より先に、手の冷えと視界で消耗する。
この記事は、乗降・コーナー・担ぎの取説を雨用に書き換えたものです。基本の動きは同じで、変えるのは「どこで降りるか」「どこまでバイクを倒すか」「何を持っていくか」の判断です。
雨の日に変わる3つのこと
降車・乗車の雨用アレンジ
動き自体は晴れの日と同じです。変えるのは判断と、クリートの扱い。
降りる判断を早くする
- 泥の登りは「後輪が1回でも空転したら降りる」。粘ると心拍だけ上がって、結局降りることになる。
- 降りる場所は、泥の中ではなく泥の手前。泥の中で降りると着地で滑る。
- 着地は両足同時を特に意識する。片足で着くと、滑った瞬間に膝に横方向の力がかかる。
乗車はクリートを入れない
- 泥がクリートに詰まると、入れようとした瞬間に足が滑ってペダルから外れる。踏み面に足を置くだけで、3〜4回転は漕いでしまう。
- どうしても入れたいときは、ペダルを足裏でこすって泥を落としてから。
- 靴底の泥は、担いでいる間に地面やバイクのフレームでこそげ落とす。
乗る場所を選ぶ
- 泥の中で乗ると最初の数回転で失速する。草の上や固い路面に出てから乗る。
- 登り切った直後ではなく、平らになって2〜3歩走ってから乗る。走りながら乗ったほうが、止まって乗るより確実に速い。
コーナリングの雨用アレンジ
晴れの日は「バイクを倒して曲がる」が正解ですが、泥ではバイクを倒した分だけタイヤの接地が減って滑ります。雨の日はバイクを立てたまま、体を内側に入れて曲がる。速度は落ちますが、滑って止まるよりずっと速い。
もう一つ、轍があるコーナーは轍に沿うのが基本です。前の人が走ったラインは泥が締まっていてグリップが残っている。轍を横切ると、その瞬間に前輪を取られます。
担ぎの雨用アレンジ
晴れの日の取説では「短い場所は提げる」と書きましたが、雨の日はこの線引きが動きます。
| 場面 | 晴れ | 雨 |
|---|---|---|
| 段差1〜2つ | 提げる | 提げる(同じ) |
| 5〜8歩の泥区間 | 乗って粘る | 降りて提げる。粘らない |
| 8歩以上の泥・登り | 肩に載せる | 肩に載せる。5歩からでも載せていい |
| 泥で車輪が回らない | 肩に載せる | 肩に載せる。押すと泥がさらに詰まる |
泥がついたバイクは1〜2kg重くなります。肩に載せるときは腕ではなく足で持ち上げる、という基本がより重要になる。腕で持ち上げると、2周目で腕が終わります。
担いで走るときは、歩幅を小さくして足裏全体で着く。かかとから着くと滑ります。
タイヤ圧と機材
タイヤ圧は下げる
雨の日はタイヤ圧を下げて接地面を増やします。目安は晴れの設定から0.2〜0.3bar(3〜5psi)下げる。体重82kgの私はチューブレス(Mavic キシリウム SL)で、桂川の雨は前後1.8barで走りました。クリンチャーならリム打ちの心配があるので、2.0bar前後が下限です。
ただし、下げすぎると泥の中でタイヤがよれて、コーナーで前輪が「折れる」感覚が出ます。試走で1本コーナーを曲がって、前輪が頼りなければ0.1bar戻す。
ブレーキは早く・長く
ディスクブレーキでも、泥を噛むと最初の一瞬は効きません。晴れと同じ場所でブレーキを握り始めると止まりきれない。コーナーの5〜10m手前から、弱く長く握る。急に強く握ると後輪がロックして横を向きます。
ギアは2枚に絞る
泥で変速が渋くなるので、レース中に使うギアを2枚に決めておく。軽いほうは「座ったまま泥の登りを回せる」ギア、重いほうは「平坦の芝で踏める」ギア。それ以外は使わない。変速の失敗で足を止めるほうが損です。
装備と持ち物
| 場面 | 持ち物 | 理由 |
|---|---|---|
| レース中 | 薄手の防水グローブ(またはラテックス手袋をインナーに) | 手が冷えるとブレーキが握れなくなる |
| レース中 | クリアレンズのアイウェア | 泥はねで目が開けられなくなる。曇ったら外して走る |
| レース中 | ワンピース(スキンスーツ)か、裾の締まるウェア | 泥が入ると重くなり、裾がペダルに絡む |
| レース後 | ゴミ袋(大)×2、着替え一式、タオル2枚 | 泥のウェアと靴を袋に入れて車に積む。帰宅後に洗う |
| レース後 | 水5L(ペットボトルかタンク)、ブラシ | 会場で泥を落とさないと、車もバイクも悲惨になる |
| レース後 | 温かい飲み物(魔法瓶) | レース後に一気に冷える。体温を戻す |
レース後:当日中にやること
- 会場で水をかけて大きな泥を落とす。乾くと落ちにくくなる。
- 帰宅後、チェーンとスプロケットを洗って乾かす。ワックス運用なら再ワックスまで走らない。
- ブレーキパッドとローターの泥を確認。パッドに砂が噛んでいたら外して洗う。
- クリートのネジに泥が詰まっているので、ブラシで落としてから締め直す。
- 靴は新聞紙を詰めて陰干し。ドライヤーで急いで乾かすと縮む。
雨の日の練習ドリル
雨の日に練習しておくと、本番で「泥でこうなる」が予測できます。練習場所は、芝の公園の雨上がりで十分です。
- 泥の手前で降りて、提げて越えて、草に出てから乗る×5本
- クリートを入れずに10回転漕ぐ×5本(踏み面に足を置くだけで走れる感覚を覚える)
- 濡れた芝でコーナー×5本。バイクを立てたまま、体を内側に傾ける
- 泥のついたバイクをその場で肩に載せる×10回(重さの違いを体で知る)
シクロクロス取説シリーズ
おわりに
雨のシクロクロスは、脚の強さより判断の速さで順位が決まります。「乗って粘る」をやめて「早めに降りる」に切り替えられるかどうか。それだけで、心拍を上げずに前との差が縮まります。
晴れの日の基本動作は乗降・コーナー・担ぎの取説に、寒い日の過ごし方は寒い日の取説にまとめています。


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