シクロクロスの乗降・コーナー・担ぎ|心拍177に張り付いたまま失速した初戦のあとに作った練習の取説

Training & Planning

シクロクロスの初戦、雨の桂川CXを走ってきました。6.6kmを39分29秒。平均心拍177、最大192。平均は閾値の175を全編で超えていて、最大はこのシーズンの鈴鹿ロードの188を抜きました。

結果より気になったのは、後半の数字です。Garminの5km区切りで見ると、前半5kmは走行速度が約12km/hで心拍177。残りの1.6kmは約9km/hに落ちたのに、心拍は176のままでした。心拍は天井に張り付いたまま、速度だけが垂れていく。突っ込みすぎたときの典型です。

そして、後半は経過時間が走行時間より約2.5分長い。降りて、担いで、また乗る、その前後で止まっていた時間が2分半以上あったということです。

脚を強くするのは時間がかかります。でも「止まる時間」は、心拍を上げずに削れます。次戦の美山向山CXまで1週間。そのあいだに直すために作った取説を、そのまま公開します。

この取説の使い方

対象は、ロードやトライアスロンから来てシクロクロスを始めたばかりの人。私自身がそうです。乗降・コーナー・担ぎの3つは、どれも心拍を上げずに速くなる技術で、1週間の反復でも効果が出ます。

各技術に「直すポイントは1つだけ」を太字で書いています。本番で頭に入れるのはその1つだけで十分です。読み方は、まず図で形を覚え、お手本動画で動きを確認し、練習で反復する。それだけです。

なお、私はコーチではなく、これは自分のための練習メモです。手順はシクロクロスで標準的に教えられている内容をまとめたものですが、膝などに違和感がある人は、無理のない範囲で試してください。

降車(ディスマウント)

降車で止まる原因の大半は、ブレーキで速度をゼロにしてから足を抜くことです。目標は、歩く速さより少し速い状態で降りて、着地の一歩目をそのまま走り出しにつなげること。

降車:右足を抜く → 左足の後ろへ → 左に着地 → 走り出す 1 右足を抜く2 左足の後ろを通す3 左側に両足で着地4 そのまま走り出す 手は常にトップチューブかハンドルに。目線は障害物ではなく、その先の路面を見る。 着地は左足→右足ではなく「ほぼ同時」。片足で止まると膝への衝撃が増える。 直すポイントは1つだけ:降りる動作を「止まってから」ではなく「走りながら」始める。
降車の4コマ。右足を抜くところから走り出しまで

手順

  1. 障害物の15〜20m手前で減速を終える。ギアは軽めに落としておく(乗車後にすぐ踏めるように)。
  2. 右足をペダルから外し、サドルの後ろを回して左側へ持ってくる。この時点で体重はまだ左ペダルに乗っている。
  3. 右手をトップチューブ(またはそのままハンドル)に、左手はハンドルに。右足を左足の後ろに通し、両足でバイクの左側に着地する。
  4. 着地と同時に左足をペダルから外し、走り出す。バイクは体の右側で転がしたまま。

よくある失敗と直し方

失敗 何が起きるか 直し方
止まってから降りる 再加速に3〜5秒かかる 歩く速さ+αで降りる練習から。最初は芝生で
右足を前から回す バランスを崩し、バイクが倒れる 必ずサドルの後ろを通す
片足着地 膝への衝撃が増える、よろける 両足同時を意識する
下を見る 障害物に突っ込む、ラインが乱れる 目線は障害物の先の路面

練習ドリル(芝生・平地で)

  • 歩く速さで降りる×5本(止まらずに走り出す)
  • 小走りの速さで降りる×5本
  • 目印(コーンやバッグ)の手前で降りて、目印を跨ぐ×5本

乗車(リマウント)

乗車で失う時間は、跳び乗ってからペダルを探す時間です。目標は、走りながら滑り乗って、座った次の回転でもう踏んでいること。クリートは最初から入れなくていい。

乗車:走りながら右足を振る → 太ももでサドルに滑る → ペダルを探さず踏む 1 走りながら左足で踏み切る2 右足を後ろから大きく振る3 太もも内側でサドルに滑る サドルへの着地点 良い:右の太ももの内側がサドルの後ろ寄りに当たり そのまま前に滑って座る。衝撃がない 悪い:真上から跳んでお尻で座る 股を打つ。怖くなって止まる。膝にも悪い 踏み切りは左足。右足は「跳ぶ」ではなく「後ろから前へ振る」。上に跳ぶと高く落ちて痛い。 座ったらペダルを見ない。踏み面を足裏で探ってそのまま踏む。クリートは2〜3回転後に入れればよい。 直すポイントは1つだけ:跳ばずに「振る」。太ももで滑り乗る。
乗車の3コマと、サドルへの着地点の良い例・悪い例

手順

  1. バイクを体の右側で走らせながら、両手でハンドルを持つ。バイクはやや自分側に傾ける。
  2. 左足で踏み切る。踏み切りは最後の一歩で、ここで歩幅を詰めない。
  3. 右足を後ろから前へ振る。上に跳ぶのではなく、横からサドルを跨ぐイメージ。
  4. 右の太ももの内側をサドルの後ろ寄りに当てて、そのまま前に滑って座る。
  5. 座ったらペダルを見ずに、足裏で踏み面を探って踏む。クリートは2〜3回転後に入れる。

よくある失敗と直し方

失敗 何が起きるか 直し方
上に跳ぶ 高く落ちて股を打つ、怖くなって止まる 「振る」。最初は歩きながら滑り乗るだけを練習
ペダルを見て探す フラつく、前を見ないのでラインが乱れる 踏み面の上に足を置くだけ。クリートは後回し
ギアが重い 座ってから踏めず失速 降車前に軽めに落としておく
歩幅を詰めて踏み切る 勢いが死んで滑れない 踏み切りは普段の歩幅のまま

練習ドリル(芝生・平地で)

  • 歩きながら滑り乗る×10本(跳ばない。太ももでサドルに触れる感覚を覚える)
  • 小走りで滑り乗る×5本
  • 降車→乗車をつなげて×5本(止まらずに)

サドルの高さがロードと同じなら、シクロクロスでは5mmほど下げると滑り乗りやすくなります。ただし私はレース週にフィットを変えない主義なので、これは次のオフに試します。

コーナリング

コーナーで時間を失うのは、曲がりながらブレーキを引くことです。タイヤのグリップは「曲がる」と「止まる」を同時にはできません。減速を入口前で終えて、コーナー中は曲がることだけにグリップを使う。

コーナー:外から入って、内をかすめて、外へ抜ける。ブレーキは入る前に終える コース(幅はテープで区切られている) 1 外側でブレーキを終える(ここが最後の減速) 2 内側のクリップをかすめる。外足に体重 3 出口は外側へ。ここで踏み始める 点線:内側に張り付いて曲がると、曲がりきれず外に膨らむか止まる 体の使い方 • 外足を下に伸ばし、ペダルに体重をかける• 内側の膝は開いて、バイクだけを倒す• 体は起こしておく(バイクと一緒に倒さない)• 目線は出口。前輪を見たら曲がれない• コーナー中はブレーキを触らない 直すポイントは1つ:ブレーキを入る前に終える
良いライン(実線)と、内側張り付き(点線)

路面別の違い

路面 入り方 注意点
芝・乾いた土 この図の通り。アウト・イン・アウト 外足荷重でバイクを倒せる
泥 ラインを少し大回りに。前輪を切りすぎない 前輪が滑ったらハンドルを戻し、ブレーキは触らない
砂 ブレーキは砂に入る前に終える。入ったら後ろ乗りで前輪を軽く ハンドルは軽く持ち、バイクの動きに逃げを作る
オフキャンバー(外傾き) さらに外足荷重を強く。速度は落とす 滑ったら足を着いていい。転ぶより速い

練習ドリル(コーンか木を目印に)

  • 8の字を左右各方向で×5周。ブレーキは直線部だけ。速度より「コーナー中にブレーキを触らない」を優先
  • 同じコーナーを、速度を少しずつ上げて×5本。外に膨らんだらそこが今の限界
  • 目線ドリル:コーナーの出口を入る前から見つめたまま曲がる×5本

桂川で心拍が177に張り付いた一因は、コーナーごとに止まっては再加速していたことでした。曲がった先で踏み直す量を減らせれば、同じ心拍で速くなります。

担ぎ(ショルダリング)

担ぎで時間を失うのは、肩に載せる・降ろすの往復です。入門では、ほとんどの障害物は「提げる」だけで足ります。肩に載せるのは階段と、走って登る長い崖だけに絞る。

担ぎ:短い場所は「提げる」、階段・長い登りは「肩に載せる」 提げ(サスペンド):板・倒木・段差1〜2つ 担ぎ(ショルダリング):階段・長い走り区間 右手でトップチューブを持ち、腰の高さに持ち上げる 走りながら持てて、すぐ乗れる。こちらが基本 ダウンチューブを持ち、トップチューブを右肩へ 右腕をダウンチューブ下から回しハンドルを持つ 持ち上げは腕ではなく、膝を曲げて腰を落としてから足で立ち上がる。 肩に載せるのは担ぐ区間が歩いて8歩以上のとき。それより短ければ提げる方が速い。 直すポイントは1つだけ:短い場所で肩に載せない。載せて降ろす時間がもったいない。
提げと肩載せの使い分け。短い場所は提げる

使い分け

場面 やり方 理由
バリア(板)・倒木・段差1〜2つ 提げる。右手でトップチューブ 載せ降ろす時間がない。すぐ乗れる
階段(3段以上) 肩に載せる 腕で持つとペダルが脚に当たり、つまずく
走って登る崖(8歩以上) 肩に載せる 腕が先に疲れる。肩なら腕を振って走れる
泥で車輪が回らない 肩に載せる 押すより担ぐ方が速い

肩に載せる手順

  1. 降車して走りながら、右手をトップチューブからダウンチューブに持ち替える。
  2. 膝を曲げて腰を落とし、足で立ち上がりながらトップチューブを右肩に載せる。腕で持ち上げない。
  3. 右腕をダウンチューブの下から回して、ハンドル(ドロップかステム近く)を持つ。これで前輪が暴れない。
  4. 左手は自由に。階段なら手すりや膝に添えてよい。
  5. 降ろすときは、走りながらダウンチューブを持って前に出し、車輪を先に着けてすぐ乗車動作へ。

練習ドリル

  • 提げてコーンを跨ぐ×5本(降車→提げ→跨ぐ→乗車を止まらずに)
  • その場で肩に載せて降ろす×10回(足で持ち上げる感覚を覚える)
  • 走りながら肩に載せて、10歩走って降ろして乗車×5本

次戦までの練習メニュー(40分)

美山向山まで実質1回しか練習日がないので、40分に全部入れました。場所は芝生か土の公園で、コーン(なければバッグや水筒)を2つ用意する。心拍は上げない。全体を通して「止まらずに動作をつなぐ」ことを唯一の目標にします。

時間 内容 本数 見るポイント
0〜5分 流し。ブレーキの効き、タイヤ圧、クリートの着脱を確認 — 違和感があればここで直す
5〜12分 歩く速さで降車→走り出し 5本 右足はサドルの後ろを通したか。両足同時に着いたか
12〜20分 歩きながら滑り乗る→小走りで滑り乗る 10本+5本 跳んでいないか。太ももでサドルに触れたか
20〜27分 降車→提げ→コーンを跨ぐ→乗車を一連で 5本 一度も止まらなかったか
27〜34分 8の字コーナリング(左右各5周) 10周 コーナー中にブレーキを触らなかったか
34〜38分 その場で肩に載せる→降ろす 10回 腕ではなく足で持ち上げたか
38〜40分 流して終了 — 体の感触をメモ

本番で頭に入れるのは3つだけ

  1. 降りる動作は止まってからではなく、走りながら始める。
  2. 乗る動作は跳ばずに振る。太ももで滑り乗る。
  3. コーナーはブレーキを入る前に終える。

お手本動画

英語の動画でも、見るのは体の動きなので言葉は要りません。各動画で「どこを見るか」を先に決めてから再生し、0.5倍速で2〜3回見る。日本語ならGCN Japanのチャンネルで「シクロクロス」を検索すると、字幕版が見つかります。

技術 動画 見るポイント
乗降(基本) How To Dismount & Remount A Cyclo-cross Bike(GCN, 2019) 右足がサドルの後ろを通る瞬間。着地後に足が止まらず走り出しているか
乗車(滑り乗り) How To Mount(GCN Shorts, 2022) 跳んでいない。太ももの内側がサドルに触れてから座っている
乗降(ロード乗りが習う) How To Get Off And On A Cyclocross Bike(GCN, 2014) ロード出身の人が最初にやる失敗(止まってから降りる、上に跳ぶ)と、その直し方
走りながらの乗車 How to do a Cyclocross Running Remount(Huw Williams) 踏み切り足の位置。バイクをやや自分側に傾けている
担ぎ・急坂 How To Beat Steep Climbs(GCN) どこで降りてどこで肩に載せるか。載せる前に腰を落としているか
練習の組み立て Mastering the Fundamental Cyclocross Dismount and Remount(CTS) 文章ですが、脚振り→持ち上げ→降車→乗車の4段階に分けた練習順が参考になります

おわりに

桂川のあと、しばらく「もっと速く走れると思っていたのに」という気持ちが抜けませんでした。ただ数字を見返すと、脚が足りなかったというより、止まる回数が多すぎた。これは1週間で直せる種類の弱点です。

美山向山を走ったら、この取説のどれが効いて、どれが効かなかったかを追記します。スタートの配分、タイヤと空気圧、雨の日・寒い日の対策、初戦の持ち物は、上のシリーズにそれぞれまとめています。

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