富士ヒル70分台に足りない0.81W/kg – 岡山エンデューロが教えてくれた現実

Training & Planning

追記(W1終了後): 本記事は岡山エンデューロ直後、事前推定FTP 245Wを基準に「サブ70(70分台)狙い」で計画を組んだ時点での記録だ。その後、W1最終セッションの実走20分テストでFTPが200Wと判明し、目標をサブ80確実・サブ75チャレンジに修正した。詳細は Part 1.5 を参照してほしい。本記事は「修正前の計画」として、判断プロセスのアーカイブとして残す。

岡山国際サーキットのピットでサイコンを止めて、画面に表示された数字をしばらく見つめていた。

NP 229W。

集団走行のNP値だから、実FTPはおそらく245W前後。それでも、頭の中で電卓が勝手に動き出す。82kgで229W、つまり2.79W/kg。富士ヒル本番まで残り6週間。

これは、その「足りない数字」をどう埋めるかの話だ。

富士ヒル70分台に必要なW/kg

まず現実を見るところから始める。富士ヒルクライム(料金所〜5合目、24km / 獲得標高1,270m / 平均勾配5.2%)を何分で登るには、どれくらいのW/kgが必要なのか。

過去のリザルトと一般的なクライミング計算を突き合わせると、おおむねこのレンジになる。

タイム 必要W/kg(参考値) レベル
65分(シルバー) 約3.9 上級
70分(サブ70) 約3.6 中上級
75分(ブロンズ) 約3.3 中級
80分 約3.1 初〜中級
90分 約2.7 初級

体重・空気抵抗・機材・補給ロスでブレるので、あくまで目安だ。それでも自分の現在地2.79W/kgを当てはめると、答えはほぼ出ている。

今のままなら、富士ヒルは90分前後

サブ75すら届かない。

不足ギャップを数字で出す

70分台、できればサブ70を狙うとして、必要なのは3.6W/kg。

現状: 2.79W/kg
目標: 3.60W/kg
不足: 0.81W/kg

この0.81W/kgをどう埋めるか。方法は2つしかない。

  1. 出力(W)を上げる
  2. 体重(kg)を下げる

そして、両方を同時にやるのが現実的な解になる。

出力アップだけで埋める場合

体重82kgのまま3.6W/kgを出すには、必要な出力は 295W

229Wから295Wへ。+66Wを6週間で。

ハッキリ言って、これは無理だ。FTPが半年で30〜40W上がれば優秀という世界で、6週間で66W積むのは生理学的に難しい。素質ある若手が綺麗にトレーニングを積んでも厳しい数字で、自分のような会社員ホビーレーサーには論外と言っていい。

体重減だけで埋める場合

229Wのまま3.6W/kgを出すには、必要な体重は 63.6kg

82kgから63.6kgへ。-18.4kgを6週間で。

これは無理を通り越して危険だ。仮に達成できたとしても、筋量が落ちて出力も連動して下がるので、計算は成り立たない。

二軸の組み合わせで埋める

ここからが本題。出力と体重、両方を現実的なラインで動かしてみる。

出力: 229W → 275W(+46W)
体重: 82kg → 77kg(-5kg)
結果: 275 ÷ 77 = 3.57W/kg

3.57W/kg。サブ70ギリギリのライン、サブ75なら十分なラインだ。

+46Wは、本気の6週間トレーニングなら届く。-5kgは、週0.83kgペースで脂肪を落とせばギリギリ間に合う。どちらか片方だけなら絶望的だが、両方を中程度の負荷で同時進行させれば、計算上は届く位置にある。

これが、自分が6週間プランを組んだ出発点だ。

機材の話 – Madone SL6 Gen7はクライミングバイクではない

ここで触れておきたいのが機材の前提。

メインバイクは Trek Madone SL6 Gen7。エアロロードのフルカーボン、実測8.5kg。

エアロロードとしては優秀だが、これはクライミング向けの選択ではない。富士ヒルで上位を狙う層が乗るEmonda、Tarmac SL8、Aethos といった軽量バイクは6.8kg台が当たり前で、軽量モデルなら6.5kgを切ってくる。

機材で差をつけるならバイク買い替えが最短だが、それは今回のスコープではない。Madoneのまま、できる範囲で軽量化する。

  • 軽量チューブ or チューブレス化
  • ボトル1本だけ運用
  • サドルバッグ撤去(CO2 + タイヤレバーはジャージポケット)
  • 軽量サイコンマウント

このあたりで-500g前後。8.5kg → 8.0kg。劇的ではないが、24km登り続ける中ではゼロより明確に効いてくる。

減量プランの輪郭

5kg落とすことについて、もう少し具体的に書いておく。

6週間で-5kg、週あたり-0.83kg。脂肪を落とすペースとしては上限近いが、不可能ではない範囲だ。

Week 目標体重 摂取カロリー方針
W1 82.0 → 81.2kg TDEE -300kcal
W2 81.2 → 80.3kg TDEE -400kcal
W3 80.3 → 79.5kg TDEE -400kcal
W4 79.5 → 78.7kg TDEE -350kcal(ボリューム週)
W5 78.7 → 77.8kg TDEE -400kcal
W6 77.8 → 77.0kg TDEE -200kcal(レース週は緩める)

ルールはシンプルに3つだけ。

  1. タンパク質2g/kg体重を死守(77kg時点で154g/日)。これを切ると筋量が落ちて出力も落ちる
  2. 糖質はトレ前後に集中。普段の食事は控えめにして、トレーニング時間帯にエネルギーを寄せる
  3. 毎朝起床直後に体重測定、週平均で管理。日々の変動に振り回されない

W6だけは減量よりグリコーゲン満タン優先。レース直前に体脂肪を削る意味はない。

残り6週間で何をやるか

ここまでが「現状把握」の話。残り6週間で実際に何をやるかは、別記事で全公開する。

Part 2: 6週間トレーニングプランの全42日を公開

ざっくり言うと、こういう構成になる。

  • W1: リセット + FTP再測定(集団走行のNPではなく正確なFTPでゾーン設計し直す)
  • W2-W3: SST → Threshold → VO2maxと強度を段階的に上げる
  • W4: ボリュームピーク。週10時間。ここが分岐点
  • W5: レースシミュレーション(金剛山×2連続で本番ペースを体に入れる)
  • W6: テーパー。ボリューム半減、強度は維持

ZwiftだけでもなくZ実走だけでもなく、両方を計画的に組み合わせる。Zwiftは強度コントロールに、実走は実際の登坂感覚に、それぞれ役割を分ける。

特に大阪在住の自分にとって核になるのが金剛山だ。距離10.3km / 獲得544m / 平均5.3%。富士ヒル(24km / 1270m / 5.2%)と勾配プロファイルがほぼ完全に一致する。これを使えるかどうかで関西ローディーの富士ヒル対策効率は大きく変わると思っている(これも別記事で詳しく書く)。

次回予告

次の記事で、6週間プランの全42日を公開する。

  • 各週の狙いと代表メニュー
  • ZwiftワークアウトとPower Zoneの設定
  • 金剛山・高野山の使い分け
  • 実走とインドアの配分

「6週間で+46W/-5kgが本当に成立するのか」を、計画ベースで全部見せる予定だ。

そして6/7のレース当日、この計画が正しかったかどうかは、サイコンが教えてくれる。

70分台が出れば計画の勝ち、出なければどこで読み違えたかを書く。どちらに転んでも、「FTP229W・82kgからの6週間」というデータは、同じスペックで富士ヒルを狙う人の参考になるはずだ。

続きはPart 2で。


本記事の位置づけ(再掲): 本記事は事前推定FTP 245Wを基にサブ70狙いで組んだ「修正前の計画」だ。実際にはW1で実走FTPが200Wと判明し、目標はサブ80確実・サブ75チャレンジに修正された。修正後の計画は Part 1.5 および Part 2(修正版5週間プラン) を参照。「期待」と「現実」の対比として、本記事をそのまま残す。

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