前回(Part 1.5)で書いたのは、目標を下方修正した話だった。Intervals.icuの推定FTP 240Wと実走20分の210W平均(補正後FTP 200W)の40Wギャップ。サブ70は実質不可能と判断して、目標をサブ80確実・サブ75チャレンジに修正した。
ここから書くのは、その修正された目標を実現するための5週間プランだ。
W1のリセットフェーズは終わった。残り5週間(W2〜W6)で、FTP 200Wから240Wへ、体重82kgから77kgへ。サブ80を確実に踏み台にして、サブ75まで届かせる現実的な設計を全公開する。
- 修正された目標の確認
- プラン全体の骨格
- ゾーン設計: 二層構造の実装
- Week 2: Build 1 – SST + Threshold導入(5/1〜5/7)
- Week 3: Build 2 – Threshold本番 + VO2max導入(5/8〜5/14)
- Week 4: Peak Volume Week(5/15〜5/21)
- Week 5: Race Specific(5/22〜5/28)
- Week 6: Taper + Race(5/29〜6/7)
- レース当日のペーシング: サブ80組み立て
- 機材最適化(Madone SL6 Gen7)
- 減量プラン(継続)
- ZwiftとPWR(実走)の役割分担
- 進捗管理
- このプランの再現性について
- 詳細版スプレッドシート(準備中)
- 次回予告
修正された目標の確認
現状(W1終了時):
実走FTP 200W / 体重82kg = 2.44W/kg
→ 富士ヒル予測タイム: 90分前後
主目標(W6本番):
FTP 240W / 体重77kg = 3.12W/kg
→ 富士ヒル予測タイム: 80分前後
挑戦目標(ストレッチゴール):
FTP 254W / 体重77kg = 3.30W/kg
→ 富士ヒル予測タイム: 75分前後
主目標は5週間で+40W、-5kg。これが、いま自分がリアルに到達できる最も挑戦的なラインだ。
プラン全体の骨格
| Phase | 期間 | 目的 | 週TSS目安 |
|---|---|---|---|
| W2: Build 1 | 5/1〜5/7 | SSTボリューム + Threshold導入 | 450 |
| W3: Build 2 | 5/8〜5/14 | Threshold本番 + VO2max導入 + FTP再測定 | 550 |
| W4: Peak Volume | 5/15〜5/21 | 週10時間、最大ボリューム | 650 |
| W5: Race Specific | 5/22〜5/28 | レースシミュレーション + FTP再測定 | 500 |
| W6: Taper + Race | 5/29〜6/7 | ボリューム半減 → 本番 | 300 |
W2〜W3で強度の基礎を積む。W4でボリュームを最大まで引き上げる。W5で本番ペースを体に入れる。W6でテーパー。サブ70狙いの旧プランから構造は変えていない。変えたのは強度の数値設定だ。
ゾーン設計: 二層構造の実装
ここがこのプランの最も重要な部分だ。
実走20分FTP 200Wを基準にした標準ゾーンと、登坂時の体感ベースで持続可能な実用Z4を併用する。
| ゾーン | %FTP | 標準ゾーン(W) | 用途 |
|---|---|---|---|
| Z1 Recovery | <55% | <110 | 回復走 |
| Z2 Endurance | 56-75% | 112-150 | 基礎持久力 |
| Z3 Tempo | 76-90% | 152-180 | ベース強化 |
| Z4 Threshold | 91-105% | 182-210 | 標準Threshold |
| Z5 VO2max | 106-120% | 212-240 | パワー天井上げ |
実用Z4(登坂時): 200-220W
実走20分平均210Wが出せた事実から、登坂時は無酸素閾値が一時的に上がり、220W前後を30〜45分程度持続できると判断した。これを実走の金剛山repsで使う。
Zwift屋内ワークアウト → 標準ゾーン(FTP 200W基準)
実走金剛山reps → 実用Z4(200-220W)
二層構造の意味は、屋内では正確なFTP管理、屋外では実態に即した負荷の確保。これがないと屋外トレーニングが緩くなりすぎて、5週間で+40Wの伸びが取れない。
Week 2: Build 1 – SST + Threshold導入(5/1〜5/7)
GW初週。実走を主軸に、Zwiftで強度を補完する。
| 日 | 内容 | 詳細 |
|---|---|---|
| 5/1 金 | OFF | – |
| 5/2 土 | 金剛山×1本 + Z2 | 金剛山をZ3(170W)で1本(目安40-44分) → 帰路Z2、合計2-2.5h |
| 5/3 日 | 金剛山×2本reps | 1本目Z3(170W)で脚作り → 下山休憩10分 → 2本目 実用Z4(200-210W)本気 |
| 5/4 月 | OFF | – |
| 5/5 火 | Zwift SST 3×12min @180W(90%FTP) | rest 4min |
| 5/6 水 | Zwift Z2 60-75min @130-140W | 会話できるペース |
| 5/7 木 | Zwift Threshold 2×15min @195W(97%FTP) | rest 6min |
週合計: 約7〜8時間
5/3の金剛山×2本repsが主役。1本目で脚を作って2本目で実用Z4(200-210W)を本気で踏む構成。
参考タイム: 金剛山42分 = 富士ヒル 80分相当ペース、38分 = 75分相当。1本目44分・2本目40分くらいで踏めれば、現状から見て順調なスタートだ。
Week 3: Build 2 – Threshold本番 + VO2max導入(5/8〜5/14)
ここからが本格フェーズ。Z4を週2回、VO2maxを週1回入れる。
| 日 | 内容 | 詳細 |
|---|---|---|
| 5/8 金 | OFF or Z1 30min | – |
| 5/9 土 | 高野山ロング 3-3.5h | R480大門経由、獲得800-900m、Z2-Z3混合 |
| 5/10 日 | 金剛山×3本reps 2.5-3h | 1本目Z3(170W) → 2本目 実用Z4(200W) → 3本目 実用Z4(210W維持)、各本間休憩10分 |
| 5/11 月 | OFF | – |
| 5/12 火 | Zwift VO2max 5×3min @230W(115%FTP) | rest 3min(Spencer) |
| 5/13 水 | Zwift SST 2×20min @175W(88%FTP) | rest 5min |
| 5/14 木 | 20分実走FTP再テスト | 金剛山20分連続全開、新FTP値でゾーン更新 |
週合計: 約8〜9時間
5/10の金剛山×3本reps が大きな負荷ポイント。3本目を実用Z4で耐えきれるかが、富士ヒル後半の粘りを決める。3本目で明確にタレる(2本目+5分以上)なら、まだ閾値持久力が足りないサイン。
5/14の20分FTPテストは最重要セッション。3週間の負荷で出力が確実に上がっているはず。理想的にはFTP 215W到達(+15W)。これが出れば計画通り、出なければW4以降の強度を再調整する。
Week 4: Peak Volume Week(5/15〜5/21)
5週間で最もきつい週。ここを完遂できればサブ80は確実、サブ75も射程に入る。逆にここで崩すとW5-6が連鎖崩壊する
| 日 | 内容 | 詳細 |
|---|---|---|
| 5/15 金 | Zwift Z2 45min | アクティブレスト |
| 5/16 土 | 高野山ロング 3-3.5h | 獲得1000m、Z3混ぜる |
| 5/17 日 | 🔥金剛山×2本連続🔥 | 1本目 実用Z4(210W)で頂上 → 下山せず麓まで降りずに5分休憩 → 2本目 実用Z4(205W)再アタック |
| 5/18 月 | OFF | 完全休養 |
| 5/19 火 | Zwift VO2max 6×3min @235W(115-120%FTP) | rest 3min |
| 5/20 水 | Zwift Z2 60min | 回復 |
| 5/21 木 | Zwift Over-Under 3×(3min@220W + 3min@180W)×3set | Threshold強化の切り札 |
週合計: 約10時間(最大)
5/17の「金剛山×2本連続(下山なし)」が、このプランで最も意味のあるセッション。
距離20km・獲得1100m。富士ヒル本番(24km・1270m)の約85%相当。これが完遂できれば、本番は「やったことのある負荷の延長線」として認識できる。タイム目安は1本目38-40分、2本目40-43分(2本目は疲労考慮)。
このWeekで睡眠を削ると一気に崩れる。睡眠7時間以上を死守する。トレーニングより重要だ。
ゾーン値は5/14のFTP再テスト結果に応じて修正する。FTPが215Wに上がっていれば、実用Z4の上限も225W前後まで引き上げる。
Week 5: Race Specific(5/22〜5/28)
本番予行演習のWeek。ボリュームは少し落として、本番ペースの精度を上げる。
| 日 | 内容 | 詳細 |
|---|---|---|
| 5/22 金 | OFF | – |
| 5/23 土 | 実走 Z2 2h | 脚を回す程度 |
| 5/24 日 | 🏁レースシミュレーション🏁 | 金剛山×2連続: 1本目 220W → 5分休憩 → 2本目 215W / 機材・補給・ウェア本番同等 |
| 5/25 月 | OFF | – |
| 5/26 火 | Zwift VO2max 4×4min @230W(115%FTP) | rest 4min(最後のVO2刺激) |
| 5/27 水 | Zwift Z2 45min | – |
| 5/28 木 | 20分実走FTP再テスト + Threshold確認 | 金剛山20分連続全開、本番直前の最終FTP値 |
週合計: 約8時間
5/24の金剛山×2が本番予行。タイム目安は1本目37-39分、2本目38-41分。
ここで、Part 1.5でも触れた目安式を再掲する。
5/24金剛山×2合計時間 + 15% ≒ 富士ヒル予想タイム
例: 合計75分なら本番86分(サブ90達成)、合計70分なら本番80分(サブ80達成ライン)、合計65分なら本番75分(サブ75到達)。
5/28のFTPテストで220-230W到達が見えれば、サブ75の挑戦目標が現実味を帯びる。
Week 6: Taper + Race(5/29〜6/7)
10日間。テーパーから本番まで。
| 日 | 内容 | 詳細 |
|---|---|---|
| 5/29 金 | OFF | – |
| 5/30 土 | Zwift Z2 75min + 3×1min @VO2max | 脚の張り抜き |
| 5/31 日 | 実走 Z2 90min + 短い登り刺激 | 体動かす程度 |
| 6/1 月 | OFF | – |
| 6/2 火 | Zwift 3×8min @195W(95%FTP) | rest 4min、ボリューム50% |
| 6/3 水 | OFF | – |
| 6/4 木 | Zwift Z2 45min + 5×30sec全開 | 神経系刺激のみ |
| 6/5 金 | 実走 Z2 45-60min | 機材最終チェック |
| 6/6 土 | 30min + 3×1min @180W | 「オープナー」。これ大事 |
| 6/7 日 | 🏁本番 サブ80確実・サブ75チャレンジ | – |
週合計: 約4〜5時間
テーパーの鉄則: 強度は維持、ボリュームは半減。完全OFFを連続で入れると体が「寝る」。短く・鋭く・少なくが正解。
6/6のオープナー(レース前日の短時間+短いインターバル)を省略する人が多いが、これは省略するとレース当日に脚が回らない。30分+1分×3本でいい、必ずやる。
レース当日のペーシング: サブ80組み立て
サブ70向けの旧プランから、ペーシングを根本的に組み直した。
| 区間 | 旧プラン(サブ70) | 新プラン(サブ80) |
|---|---|---|
| スタート〜5km | 85-90%FTP(220-235W) | 90-92%FTP(180-185W) |
| 5〜15km | 95-100%FTP(245-260W) | 100-105%FTP(200-210W) |
| 15〜20km | 95%FTP(245W) | 97-100%FTP(195-200W) |
| 20〜24km | 102-105%(265W) | 105-110%(210-220W) |
絶対値が違うので別物に見えるが、レース戦略は同じ:スタートで抑える、中盤で巡航、後半で粘る、ラストで上げる。
スタート直後のオーバーペースが富士ヒル最大の罠。これはサブ70でもサブ80でも変わらない真理だ。サブ80狙いだからこそ、最初の5kmで180W前後に抑える規律が、終盤で210Wを出す余力を残す。
補給は20分ごとにジェルor羊羹、合計3本。水はボトル半分(軽量化のため1本のみ)。
機材最適化(Madone SL6 Gen7)
サブ80狙いに変更しても、機材最適化の方針は変わらない。
- ボトル1本だけ(軽量サイド)
- 軽量チューブ/チューブレスタイヤ
- サドルバッグ外す(CO2 + タイヤレバーのみジャージポケット)
- サイコン軽量マウント
- 削減目標: -500g
8.5kg → 8.0kg。富士ヒル本番では、この500gが体感で確実に違いを生む。
減量プラン(継続)
体重82kg → 77kgの-5kgは、サブ80目標でも継続する。出力が増えなくても、体重が落ちればW/kgは上がるからだ。
| Week | 目標体重 | 摂取カロリー方針 |
|---|---|---|
| W2 | 81.2 → 80.3kg | TDEE -400kcal |
| W3 | 80.3 → 79.5kg | TDEE -400kcal |
| W4 | 79.5 → 78.7kg | TDEE -350kcal(ボリューム週は緩める) |
| W5 | 78.7 → 77.8kg | TDEE -400kcal |
| W6 | 77.8 → 77.0kg | TDEE -200kcal(レース週はグリコーゲン優先) |
ルール:
1. タンパク質2g/kg死守(77kg時で154g/日)
2. 糖質はトレ前後集中、普段控えめ
3. 毎朝起床直後に体重測定、週平均で管理
サブ75チャレンジを真剣に狙うなら、77kgではなく75kgまで落とす選択肢もある。ただし-7kgは健康と出力低下のリスクが大きいので、77kgを基本ラインとして、調子が良ければ75kgまでチャレンジするスタンスにする。
ZwiftとPWR(実走)の役割分担
このプラン全体を俯瞰すると、Zwiftと実走の使い分けには明確なルールがある。
- Zwift = 強度コントロール(SST/Threshold/VO2max/Over-Under)、平日の限られた時間で精密に追い込む
- 実走 = ボリュームと実登坂感覚(高野山ロング、金剛山reps)、週末の長時間で本番に近い負荷
Zwiftだけだと実登坂の体重移動・コース読み・補給タイミングが身につかない。実走だけだと強度コントロールの精度が出ない。両方を計画的に組み合わせるのが、限られた時間で結果を出す唯一のやり方だと思っている。
特に金剛山の使い方は、関西在住者の富士ヒル対策で最大の武器になる。なぜ金剛山が富士ヒル対策に最適なのかは、Part 3で詳しく書く。
進捗管理
各週末(木曜終了時)に以下を記録:
- 週間TSS(目安: W2=450, W3=550, W4=650, W5=500, W6=300)
- 体重(週平均)
- 主観的疲労度(1-10)
- 朝HRV or 安静時心拍
W3終了時とW5終了時の20分実走FTPテストが、強度更新の最重要チェックポイント。理想カーブは:
| 時点 | 目標FTP | W/kg(その時点の体重で) |
|---|---|---|
| W1終了 | 200W | 2.44(82kg) |
| W3終了 | 215W | 2.71(79.5kg) |
| W5終了 | 230W | 2.96(77.8kg) |
| 本番 | 240W | 3.12(77kg) → サブ80達成 |
このプランの再現性について
繰り返しになるが、これはFTP200W前後・体重82kgの中年会社員ホビーレーサーが富士ヒルでサブ80を狙う場合のプランだ。
- 既にFTP3.0W/kg超えてる人(サブ75狙い) → 強度をもう少し上げる、ボリュームを増やす
- 週6時間しか取れない人 → W4のボリューム週は無理せず週8時間に圧縮、平日Zwiftを優先
- 富士ヒル目標が90分以下狙い → SSTとZ3中心で組み直す、VO2maxは週1で十分
絶対解ではなく「自分の現在地と目標から逆算した一例」として参照してほしい。
詳細版スプレッドシート(準備中)
本記事は週単位のサマリーだが、実際にやってみると「火曜のSSTって具体的にどのZwiftワークアウト?」「金剛山repsの心拍ゾーンは?」「補給タイミングは?」と、もう一段階の詳細が必要になる。
各日のZwiftワークアウト名・目標心拍ゾーン・補給メモまで含む完全版スプレッドシートを準備中。自分のFTPを入れると全35日のW値が自動計算されるテンプレートとして公開予定。
公開のお知らせは記事末尾のメールリストか、サイト内告知で。
次回予告
Part 3は金剛山特化編。
- なぜ金剛山が富士ヒル対策に最適なのか(勾配プロファイル分析)
- 金剛山のタイムから富士ヒルタイムを予測する方法
- 高野山との使い分け(強度 vs ボリューム)
- 関西ローディーの富士ヒル対策ルート集
関西在住で富士ヒルを真面目に狙う人にとっては、Part 3が一番役に立つはず。
そして6/7、レース当日。Part 4で結果報告する。サブ80達成なら計画の勝ち、達成できなければ「サブ80すら甘かった」原因分析を書く。


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