サブ80確実・サブ75チャレンジの5週間プラン – 富士ヒルをFTP200Wから現実的に攻略する

Training & Planning

前回(Part 1.5)で書いたのは、目標を下方修正した話だった。Intervals.icuの推定FTP 240Wと実走20分の210W平均(補正後FTP 200W)の40Wギャップ。サブ70は実質不可能と判断して、目標をサブ80確実・サブ75チャレンジに修正した。

ここから書くのは、その修正された目標を実現するための5週間プランだ。

W1のリセットフェーズは終わった。残り5週間(W2〜W6)で、FTP 200Wから240Wへ、体重82kgから77kgへ。サブ80を確実に踏み台にして、サブ75まで届かせる現実的な設計を全公開する。

修正された目標の確認

現状(W1終了時):
  実走FTP 200W / 体重82kg = 2.44W/kg
  → 富士ヒル予測タイム: 90分前後

主目標(W6本番):
  FTP 240W / 体重77kg = 3.12W/kg  
  → 富士ヒル予測タイム: 80分前後

挑戦目標(ストレッチゴール):
  FTP 254W / 体重77kg = 3.30W/kg
  → 富士ヒル予測タイム: 75分前後

主目標は5週間で+40W、-5kg。これが、いま自分がリアルに到達できる最も挑戦的なラインだ。

プラン全体の骨格

Phase 期間 目的 週TSS目安
W2: Build 1 5/1〜5/7 SSTボリューム + Threshold導入 450
W3: Build 2 5/8〜5/14 Threshold本番 + VO2max導入 + FTP再測定 550
W4: Peak Volume 5/15〜5/21 週10時間、最大ボリューム 650
W5: Race Specific 5/22〜5/28 レースシミュレーション + FTP再測定 500
W6: Taper + Race 5/29〜6/7 ボリューム半減 → 本番 300

W2〜W3で強度の基礎を積む。W4でボリュームを最大まで引き上げる。W5で本番ペースを体に入れる。W6でテーパー。サブ70狙いの旧プランから構造は変えていない。変えたのは強度の数値設定だ。

ゾーン設計: 二層構造の実装

ここがこのプランの最も重要な部分だ。

実走20分FTP 200Wを基準にした標準ゾーンと、登坂時の体感ベースで持続可能な実用Z4を併用する。

ゾーン %FTP 標準ゾーン(W) 用途
Z1 Recovery <55% <110 回復走
Z2 Endurance 56-75% 112-150 基礎持久力
Z3 Tempo 76-90% 152-180 ベース強化
Z4 Threshold 91-105% 182-210 標準Threshold
Z5 VO2max 106-120% 212-240 パワー天井上げ

実用Z4(登坂時): 200-220W

実走20分平均210Wが出せた事実から、登坂時は無酸素閾値が一時的に上がり、220W前後を30〜45分程度持続できると判断した。これを実走の金剛山repsで使う。

Zwift屋内ワークアウト → 標準ゾーン(FTP 200W基準)
実走金剛山reps     → 実用Z4(200-220W)

二層構造の意味は、屋内では正確なFTP管理、屋外では実態に即した負荷の確保。これがないと屋外トレーニングが緩くなりすぎて、5週間で+40Wの伸びが取れない。

Week 2: Build 1 – SST + Threshold導入(5/1〜5/7)

GW初週。実走を主軸に、Zwiftで強度を補完する。

内容 詳細
5/1 金 OFF
5/2 土 金剛山×1本 + Z2 金剛山をZ3(170W)で1本(目安40-44分) → 帰路Z2、合計2-2.5h
5/3 日 金剛山×2本reps 1本目Z3(170W)で脚作り → 下山休憩10分 → 2本目 実用Z4(200-210W)本気
5/4 月 OFF
5/5 火 Zwift SST 3×12min @180W(90%FTP) rest 4min
5/6 水 Zwift Z2 60-75min @130-140W 会話できるペース
5/7 木 Zwift Threshold 2×15min @195W(97%FTP) rest 6min

週合計: 約7〜8時間

5/3の金剛山×2本repsが主役。1本目で脚を作って2本目で実用Z4(200-210W)を本気で踏む構成。

参考タイム: 金剛山42分 = 富士ヒル 80分相当ペース、38分 = 75分相当。1本目44分・2本目40分くらいで踏めれば、現状から見て順調なスタートだ。

Week 3: Build 2 – Threshold本番 + VO2max導入(5/8〜5/14)

ここからが本格フェーズ。Z4を週2回、VO2maxを週1回入れる。

内容 詳細
5/8 金 OFF or Z1 30min
5/9 土 高野山ロング 3-3.5h R480大門経由、獲得800-900m、Z2-Z3混合
5/10 日 金剛山×3本reps 2.5-3h 1本目Z3(170W) → 2本目 実用Z4(200W) → 3本目 実用Z4(210W維持)、各本間休憩10分
5/11 月 OFF
5/12 火 Zwift VO2max 5×3min @230W(115%FTP) rest 3min(Spencer)
5/13 水 Zwift SST 2×20min @175W(88%FTP) rest 5min
5/14 木 20分実走FTP再テスト 金剛山20分連続全開、新FTP値でゾーン更新

週合計: 約8〜9時間

5/10の金剛山×3本reps が大きな負荷ポイント。3本目を実用Z4で耐えきれるかが、富士ヒル後半の粘りを決める。3本目で明確にタレる(2本目+5分以上)なら、まだ閾値持久力が足りないサイン。

5/14の20分FTPテストは最重要セッション。3週間の負荷で出力が確実に上がっているはず。理想的にはFTP 215W到達(+15W)。これが出れば計画通り、出なければW4以降の強度を再調整する。

Week 4: Peak Volume Week(5/15〜5/21)

5週間で最もきつい週。ここを完遂できればサブ80は確実、サブ75も射程に入る。逆にここで崩すとW5-6が連鎖崩壊する

内容 詳細
5/15 金 Zwift Z2 45min アクティブレスト
5/16 土 高野山ロング 3-3.5h 獲得1000m、Z3混ぜる
5/17 日 🔥金剛山×2本連続🔥 1本目 実用Z4(210W)で頂上 → 下山せず麓まで降りずに5分休憩 → 2本目 実用Z4(205W)再アタック
5/18 月 OFF 完全休養
5/19 火 Zwift VO2max 6×3min @235W(115-120%FTP) rest 3min
5/20 水 Zwift Z2 60min 回復
5/21 木 Zwift Over-Under 3×(3min@220W + 3min@180W)×3set Threshold強化の切り札

週合計: 約10時間(最大)

5/17の「金剛山×2本連続(下山なし)」が、このプランで最も意味のあるセッション。

距離20km・獲得1100m。富士ヒル本番(24km・1270m)の約85%相当。これが完遂できれば、本番は「やったことのある負荷の延長線」として認識できる。タイム目安は1本目38-40分、2本目40-43分(2本目は疲労考慮)。

このWeekで睡眠を削ると一気に崩れる。睡眠7時間以上を死守する。トレーニングより重要だ。

ゾーン値は5/14のFTP再テスト結果に応じて修正する。FTPが215Wに上がっていれば、実用Z4の上限も225W前後まで引き上げる。

Week 5: Race Specific(5/22〜5/28)

本番予行演習のWeek。ボリュームは少し落として、本番ペースの精度を上げる。

内容 詳細
5/22 金 OFF
5/23 土 実走 Z2 2h 脚を回す程度
5/24 日 🏁レースシミュレーション🏁 金剛山×2連続: 1本目 220W → 5分休憩 → 2本目 215W / 機材・補給・ウェア本番同等
5/25 月 OFF
5/26 火 Zwift VO2max 4×4min @230W(115%FTP) rest 4min(最後のVO2刺激)
5/27 水 Zwift Z2 45min
5/28 木 20分実走FTP再テスト + Threshold確認 金剛山20分連続全開、本番直前の最終FTP値

週合計: 約8時間

5/24の金剛山×2が本番予行。タイム目安は1本目37-39分、2本目38-41分。

ここで、Part 1.5でも触れた目安式を再掲する。

5/24金剛山×2合計時間 + 15% ≒ 富士ヒル予想タイム

例: 合計75分なら本番86分(サブ90達成)、合計70分なら本番80分(サブ80達成ライン)、合計65分なら本番75分(サブ75到達)。

5/28のFTPテストで220-230W到達が見えれば、サブ75の挑戦目標が現実味を帯びる。

Week 6: Taper + Race(5/29〜6/7)

10日間。テーパーから本番まで。

内容 詳細
5/29 金 OFF
5/30 土 Zwift Z2 75min + 3×1min @VO2max 脚の張り抜き
5/31 日 実走 Z2 90min + 短い登り刺激 体動かす程度
6/1 月 OFF
6/2 火 Zwift 3×8min @195W(95%FTP) rest 4min、ボリューム50%
6/3 水 OFF
6/4 木 Zwift Z2 45min + 5×30sec全開 神経系刺激のみ
6/5 金 実走 Z2 45-60min 機材最終チェック
6/6 土 30min + 3×1min @180W 「オープナー」。これ大事
6/7 日 🏁本番 サブ80確実・サブ75チャレンジ

週合計: 約4〜5時間

テーパーの鉄則: 強度は維持、ボリュームは半減。完全OFFを連続で入れると体が「寝る」。短く・鋭く・少なくが正解。

6/6のオープナー(レース前日の短時間+短いインターバル)を省略する人が多いが、これは省略するとレース当日に脚が回らない。30分+1分×3本でいい、必ずやる。

レース当日のペーシング: サブ80組み立て

サブ70向けの旧プランから、ペーシングを根本的に組み直した。

区間 旧プラン(サブ70) 新プラン(サブ80)
スタート〜5km 85-90%FTP(220-235W) 90-92%FTP(180-185W)
5〜15km 95-100%FTP(245-260W) 100-105%FTP(200-210W)
15〜20km 95%FTP(245W) 97-100%FTP(195-200W)
20〜24km 102-105%(265W) 105-110%(210-220W)

絶対値が違うので別物に見えるが、レース戦略は同じ:スタートで抑える、中盤で巡航、後半で粘る、ラストで上げる

スタート直後のオーバーペースが富士ヒル最大の罠。これはサブ70でもサブ80でも変わらない真理だ。サブ80狙いだからこそ、最初の5kmで180W前後に抑える規律が、終盤で210Wを出す余力を残す。

補給は20分ごとにジェルor羊羹、合計3本。水はボトル半分(軽量化のため1本のみ)。

機材最適化(Madone SL6 Gen7)

サブ80狙いに変更しても、機材最適化の方針は変わらない。

  • ボトル1本だけ(軽量サイド)
  • 軽量チューブ/チューブレスタイヤ
  • サドルバッグ外す(CO2 + タイヤレバーのみジャージポケット)
  • サイコン軽量マウント
  • 削減目標: -500g

8.5kg → 8.0kg。富士ヒル本番では、この500gが体感で確実に違いを生む。

減量プラン(継続)

体重82kg → 77kgの-5kgは、サブ80目標でも継続する。出力が増えなくても、体重が落ちればW/kgは上がるからだ。

Week 目標体重 摂取カロリー方針
W2 81.2 → 80.3kg TDEE -400kcal
W3 80.3 → 79.5kg TDEE -400kcal
W4 79.5 → 78.7kg TDEE -350kcal(ボリューム週は緩める)
W5 78.7 → 77.8kg TDEE -400kcal
W6 77.8 → 77.0kg TDEE -200kcal(レース週はグリコーゲン優先)

ルール:
1. タンパク質2g/kg死守(77kg時で154g/日)
2. 糖質はトレ前後集中、普段控えめ
3. 毎朝起床直後に体重測定、週平均で管理

サブ75チャレンジを真剣に狙うなら、77kgではなく75kgまで落とす選択肢もある。ただし-7kgは健康と出力低下のリスクが大きいので、77kgを基本ラインとして、調子が良ければ75kgまでチャレンジするスタンスにする。

ZwiftとPWR(実走)の役割分担

このプラン全体を俯瞰すると、Zwiftと実走の使い分けには明確なルールがある。

  • Zwift = 強度コントロール(SST/Threshold/VO2max/Over-Under)、平日の限られた時間で精密に追い込む
  • 実走 = ボリュームと実登坂感覚(高野山ロング、金剛山reps)、週末の長時間で本番に近い負荷

Zwiftだけだと実登坂の体重移動・コース読み・補給タイミングが身につかない。実走だけだと強度コントロールの精度が出ない。両方を計画的に組み合わせるのが、限られた時間で結果を出す唯一のやり方だと思っている。

特に金剛山の使い方は、関西在住者の富士ヒル対策で最大の武器になる。なぜ金剛山が富士ヒル対策に最適なのかは、Part 3で詳しく書く。

進捗管理

各週末(木曜終了時)に以下を記録:

  • 週間TSS(目安: W2=450, W3=550, W4=650, W5=500, W6=300)
  • 体重(週平均)
  • 主観的疲労度(1-10)
  • 朝HRV or 安静時心拍

W3終了時とW5終了時の20分実走FTPテストが、強度更新の最重要チェックポイント。理想カーブは:

時点 目標FTP W/kg(その時点の体重で)
W1終了 200W 2.44(82kg)
W3終了 215W 2.71(79.5kg)
W5終了 230W 2.96(77.8kg)
本番 240W 3.12(77kg) → サブ80達成

このプランの再現性について

繰り返しになるが、これはFTP200W前後・体重82kgの中年会社員ホビーレーサーが富士ヒルでサブ80を狙う場合のプランだ。

  • 既にFTP3.0W/kg超えてる人(サブ75狙い) → 強度をもう少し上げる、ボリュームを増やす
  • 週6時間しか取れない人 → W4のボリューム週は無理せず週8時間に圧縮、平日Zwiftを優先
  • 富士ヒル目標が90分以下狙い → SSTとZ3中心で組み直す、VO2maxは週1で十分

絶対解ではなく「自分の現在地と目標から逆算した一例」として参照してほしい。

詳細版スプレッドシート(準備中)

本記事は週単位のサマリーだが、実際にやってみると「火曜のSSTって具体的にどのZwiftワークアウト?」「金剛山repsの心拍ゾーンは?」「補給タイミングは?」と、もう一段階の詳細が必要になる。

各日のZwiftワークアウト名・目標心拍ゾーン・補給メモまで含む完全版スプレッドシートを準備中。自分のFTPを入れると全35日のW値が自動計算されるテンプレートとして公開予定。

公開のお知らせは記事末尾のメールリストか、サイト内告知で。

次回予告

Part 3は金剛山特化編

  • なぜ金剛山が富士ヒル対策に最適なのか(勾配プロファイル分析)
  • 金剛山のタイムから富士ヒルタイムを予測する方法
  • 高野山との使い分け(強度 vs ボリューム)
  • 関西ローディーの富士ヒル対策ルート集

関西在住で富士ヒルを真面目に狙う人にとっては、Part 3が一番役に立つはず。

そして6/7、レース当日。Part 4で結果報告する。サブ80達成なら計画の勝ち、達成できなければ「サブ80すら甘かった」原因分析を書く。

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