W1の最終セッション、金剛山。スマホにIntervals.icuから通知が届いた。
推定FTPが11Wから240Wに増えました!
岡山エンデューロのNP 229Wからの自然な伸び、Part 1で書いた事前推定245Wとほぼ一致する数値。「予想通りの線」と一瞬安心した。
しかし、その240Wの正体を確認した瞬間、シリーズの前提が崩れた。
これは、Intervals.icuの推定FTPを鵜呑みにすると何が起きるかの記録、そして富士ヒルの目標をサブ70からサブ80に下方修正した判断の話だ。
「推定FTP 240W」の正体
Intervals.icuの通知を開いて、対象アクティビティを見た。
- 4/26(日) 08:54
- 千早赤阪村
- 5分16秒・1km
5分テストのデータから推定された240W。
これは20分連続で踏める出力ではない。Intervals.icu のeFTP(estimated FTP)アルゴリズムは、過去のパワーカーブから「このライダーなら理論上これくらい出せるはず」を逆算する仕組みで、短時間データを長時間出力に外挿した推定値だ。
5分全開で出せるパワーは、20分連続で踏めるパワーより明らかに高い。にもかかわらず、5分パワーから20分FTPを推定すると、現実より楽観的な値が返ってくる。
この時点で、「20分実走で本当に240Wが出せるのか」を確認する必要が出た。
20分実走テストの結果: 210W
同じ千早赤阪村のルートで、改めて20分間の連続全開テストを実施した。
結果は 20分平均210W。
慣例の補正係数0.95をかけて、実走20分FTPは約200W。
推定FTP(Intervals.icu): 240W
実走20分テスト: 210W平均 → ×0.95 = FTP 200W
ギャップ: 40W
体重82kgで: 2.44W/kg
5分から外挿した推定値と、20分実走の実態が、40Wも乖離していた。
これは富士ヒルクライムという24km・1時間以上のレースで使うべき数値が、240Wではなく200Wだという意味だ。
サブ70が、ほぼ不可能になる数字
Part 1で書いた目標は、サブ70(70分台)のために3.6W/kg。実走FTP 200W基準で必要な数字を引き直すと:
出力: 200W → 275W(+75W)
体重: 82kg → 77kg(-5kg)
結果: 275 ÷ 77 = 3.57W/kg
5週間で+75W。これは生理学的にほぼ不可能な数字だ。
優秀なホビーレーサーがオフシーズンを通じて(3〜4ヶ月かけて)+30〜50W積めれば良い方で、それを5週間に圧縮する根拠は自分のトレーニング歴のどこにもない。Part 1で「+66Wは無理」と書いたが、今回はそれより9W大きいギャップになった。
ここで選択肢は3つあった。
- サブ70目標を維持して、レース当日に撃沈する
- 目標を維持したフリで、コンテンツとして「挑戦記」を書き続ける
- 実力に合った目標に修正する
選んだのは3番だ。
目標再設定: サブ80確実、サブ75チャレンジ
修正後の目標値:
| 区分 | タイム | 必要W/kg | 必要出力(77kg時) |
|---|---|---|---|
| 主目標 | サブ80(80分前後) | 3.1 | 240W |
| 挑戦目標 | サブ75 | 3.3 | 254W |
主目標240Wは、現実的な5週間トレーニングで届く範囲。実FTP 200Wから+40Wは、強度トレーニング+ボリューム積み増し+減量の併用なら、十分に射程に入る。
サブ75を狙うなら出力254Wが必要で、これはストレッチゴールとして位置づける。届けばラッキー、届かなくてもサブ80確実なら計画通り。
修正前: 70分台、必要+75W、ほぼ不可能
修正後: サブ80、必要+40W、現実的
(サブ75は+54Wでチャレンジ枠)
レース当日のオーバーペース回避という、もう一つの理由
目標を下方修正したのは、トレーニング設計の話だけではない。レース当日のペーシングの話でもある。
サブ70を諦めずに走った場合、スタート直後に250W前後で踏み込むことになる。実FTP 200Wに対して125%出力を、24kmの登坂の冒頭で投下する。
結果は明らかだ。5kmで脚が終わる。後半20kmを150W以下で這い上がる展開になり、最終タイムは90分超えるだろう。「目標を高く持つこと」の代償として、本来出せたサブ80すら失う。
サブ80目標で、スタート時180W→中盤210W→後半220Wというペース配分なら、24km通して脚を残しながら走り切れる。これはトレーニングの数値ではなく、レース戦略の問題として下方修正が正しい。
Intervals.icuユーザーへの実用的教訓
この経験から、自分なりの結論が出た。
Intervals.icuの推定FTPは、レース計画には使わない。
推定FTPはトレーニング履歴から逆算された理論値で、以下の特性がある:
- 短時間(5分以下)の高出力データに引っ張られる
- 持続力(ロングテール)を反映しない
- 「ピーク状態の自分なら出せるはず」という楽観的補正がかかる
ヒルクライムやエンデュランス系レースで使うべきは、実走20分テストでの実測値だ。これが面倒でも、推定値で計画を組んで撃沈するより遥かにマシだ。
特にIntervals.icuを使い始めたばかりのユーザー(eFTPがゼロから一気に上がる時期)は、推定値が大きく外れる可能性がある。自分の場合、11W → 240Wという急上昇は、まさにそのフェーズだった。
ゾーン更新: 実FTP 200W基準
新しいFTP 200Wでゾーンを引き直した。
| ゾーン | %FTP | 出力(W) |
|---|---|---|
| Z2 Endurance | 56-75% | 112-150 |
| Z3 Tempo | 76-90% | 152-180 |
| Z4 Threshold | 91-105% | 182-210 |
| Z5 VO2max | 106-120% | 212-240 |
ただし、これだけでは登坂トレーニングが軽すぎる。20分平均210Wを実走で出せた以上、Z4の上限を実用的に220W付近まで拡張する運用にする。
FTP基準ゾーン: Z4 = 182-210W (理論値)
実用Z4(登坂時): 200-220W (体感ベース)
この二層構造は、トレーニング負荷を稼ぐためのリアル運用だ。FTP 200Wは「平地連続持続」の数値で、登坂時は無酸素閾値が一時的に上がるため、220W前後までなら30分程度持続可能なはず。
W2以降のZwiftワークアウトは理論値ゾーン、実走の金剛山repsは実用Z4で実施する。
W2以降のプラン修正
トレーニング構造そのものは、Part 2で公開した6週間プランをほぼ踏襲する。変更点だけ列挙する。
- 目標出力の修正
- サブ80狙いに合わせて、最終FTP目標を275Wから240Wに下方修正
- 5週間で+40Wの伸びを目指す
- 金剛山repsの目標出力
- W3金剛山×3本: 1本目Z3(170W) → 2-3本目 実用Z4(210-220W)
- W4金剛山×2連続: 両本とも 実用Z4(210W前後)
- W5金剛山×2(本番予行): 1本目 220W / 2本目 215W
- 減量計画
- 82kg → 77kgのまま継続(変更なし)
- サブ75チャレンジを諦めない場合は-7kgも視野(健康リスク要監視)
- レース当日のペーシング
- スタート〜5km: 175-185W(慎重に)
- 5〜15km: 200-215W(メイン巡航)
- 15〜20km: 200W前後(高度影響想定)
- 20〜24km: 余力あれば220W
「失敗」と呼ばないために
このPart 1.5を「失敗報告」として書くつもりは最初なかった。
ところが書き進めるうちに、目標を5W/kgも下方修正することは、明確な計画の失敗であると認める必要があると思った。事前推定245Wに基づいたPart 1の試算は、実態から見れば楽観的すぎた。Intervals.icuの推定値を信用しすぎたのも、自分の判断ミスだ。
ただ、ここで「失敗を認めて修正する」ことと、「失敗を隠して走り切る」ことの差は大きい。
修正した目標は確実に達成できるラインに置いた。トレーニング負荷も計画通り維持する。減量も続ける。サブ80を確実に、サブ75を本気で狙う5週間が、ここから始まる。
そしてレース後のPart 4で、修正した目標が達成できたかどうかを正直に書く。サブ80達成なら計画の勝ち、達成できなければ「サブ80すら甘かった」原因分析を書く。どちらにしても、Intervals.icuの推定240Wを信じてサブ70で撃沈するよりはマシな展開になる。
次のチェックポイント
W3終了時(5/14)に、もう一度20分実走テスト。
理想的には W3で実FTP 215W、W5で230W、本番直前に240W。これがサブ80目標の到達ラインになる。
シリーズはPart 2(修正版・サブ80プラン)、Part 3(金剛山特化編)、Part 4(結果報告)と続く。Part 2は目標修正後の5週間プランを全公開する。
W2の本格スタートは明日。SST 3×12分から、新しい現実の上で再開する。

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